2023 Fiscal Year Research-status Report
日本古代の大学の学問に関する基礎的研究─9、10世紀の大学寮紀伝道を中心に─
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21K00305
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
滝川 幸司 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 教授 (80309525)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 大学寮 / 文章経国 / 初唐 / 出典 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は書評を1本し、学術論文を1本刊行した。いずれも大学寮の理念に関わる研究の成果である。 「半谷芳文著『勅撰三漢詩集の研究』」(11月)は、半谷芳文著書の書評である。当該書は、書名の通り、凌雲集・文華秀麗集・経国集の勅撰三漢詩集の研究書であるが、本研究課題と関係の深い、「文章経国」思想を取り上げている。この点について、大学寮の理念と勅撰三集という編纂理念との別があることを指摘した。 「国を経め家を治むるに文より善きは莫し―漢文学より見た大学寮の理念―」(12月)は、大学寮の理念を示す公文書を注釈的に読解した。特に詔勅等の読解はこれまで行われておらず、初めて行われた注釈的読解といっていい。その結果、初唐の太宗・高宗の詔勅や、初唐の学校関係の文章を学び、それらに示された学校理念を継承していることを明らかにした。これまでの平安前期漢文学研究では、大学寮の理念についても、魏文帝のいう「文章経国」思想を踏まえたという指摘があったが、今回の検討によって、まったく異なっていることが明らかになった。魏文帝の「文章経国」の揚言があまりにも広い範囲で平安朝に影響を与えていたかのように考えられているが、大学寮の理念はそれとは別系統の思想であることを具体的に跡づけたのである。魏文帝の「文章経国」は詩文集編纂の理念として扱われており、それを幅広く適用することの危険性をさらに論じる必要があるが、それは24年度に行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
紀伝道の学問を具体的に示す、大学寮の詔勅に関する文章を取り上げて検討し、論文を公刊した。 紀伝道出身者のうち、古今和歌集に歌を残す歌よみについて検討を行った。次年度以降に論文化する予定である。 紀伝道出身者が執筆する詩序について、あらたな視点を獲得した。次年度、刊行予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も今年度から引き続き、紀伝道出身者の学問について研究を進める。 魏文帝のいう「文章経国」思想の具体的展開について考察を進める予定である。 また同様に、紀伝道出身者の官僚世界での位置づけに関わる儒家の伝記研究を進める。
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