2021 Fiscal Year Research-status Report
新視点による近世中期俳諧の研究:芭蕉流付合手法の継承・断絶を軸として
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21K00309
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Research Institution | Wayo Women's University |
Principal Investigator |
佐藤 勝明 和洋女子大学, 人文学部, 教授 (60255172)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 善隆 立正大学, 文学部, 教授 (30287940)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 俳諧 / 近世中期 / 芭蕉流 / 付合手法 / 俳人大観 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の交付申請書で「研究実施計画」に記した内容に基づき、2021年度にどれだけの成果が得られたのかを記していく。1年目に行うこととして「研究実施計画」に記したのは、①享保期の「俳書仮目録」を作ること、②それに基づきつつ、享保元年の俳諧資料を調査し、入集者と発句数や連句の連衆を一覧化した「俳人大観」を作って公表すること、③研究代表者が開発してきた付合の分析手法を利用して、近世中期の連句作品を選んで注釈すること、の3点である。 ①については、実はあまりはかどっていない。既存の俳書年表(広島大学の『近世文芸稿』(六)~(七)など)は享保期の半ばまでしかなく、それも十分なものではない。そこで、その欠を埋めるべく、享保期全般の「俳書仮目録」の作成をもくろんだものの、感染症防止の観点から図書館・文庫等への出張も控えねばならず、ネット情報を頼りに仮のさらに仮のものを途中まで作ったにとどまる。これは、むしろ4年間をかけて行うべきことと考え、軌道修正をしたい。 ②の「俳人大観」を作成する作業は、これまでの研究で培った手法を応用して、まずは順調に進んだと言える。①がさほど進まなかったため、既存の年表に頼った調査ながら、享保元年の俳書はほぼ分析を終え、「享保時代俳人大観(一)」(『近世文芸研究と評論』101、2021年11月)として公表した。 ③の連句評釈に関しては、初年度ということもあり、参加メンバーに方針や手法の共有を促しながらの作業であるため、歌仙一巻の注釈にとどまった。しかし、近世中期の連句注釈が稀な研究状況に一石を投じることにはなったと考える。これは「『秋の日』「鹿老て」歌仙分析」(『近世文芸研究と評論』101、2021年11月)として公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在も続く感染症の流行という状況下で、俳書の調査が思うようにできない、ということが最大の理由である。インターネット上に公開されている資料は、できるだけ多くを見るようにして、情報の入手に努めたが、実際に俳書を手に取ることから得られる情報は格別であり、それができないというジレンマを抱えたままの出発であった。 それでも、上の「研究実績の概要」に記した通り、予定している3つの課題のうち、②「俳人大観」の作成と、③未注釈連句の注釈に関しては、相応の成果を上げたと自負している。設定した課題がこの2つにとどまるならば、進捗状況は(2)の「おおむね順調に進行している」に相当すると考えている。この2点に関しては、次年度以降もこのペースで進めていくことにしたい。 問題は、①の享保期の「俳書仮目録」を作ること、にあった。上記の理由で、俳書の調査がはかどらなかったことが、その原因の1番目。2番目として、そもそもこれは片手間に出来ることではなく、そこを読み間違えていた、ということがある。むしろ、これは研究期間の全般を使って行うべきものとして、軌道修正したいと考える。とくに②の「俳人大観」が積み上がることにより、「俳書仮目録」は「俳書目録」に近いものとして現れることになるだろう、と予測する。
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Strategy for Future Research Activity |
上の「研究実績の概要」や「現在までの進捗状況」に書いた通り、設定した3つの課題のうち、②「俳人大観」の作成と、③未注釈連句の注釈に関しては、ほぼ順調なすべり出しと言ってよく、予定した1年間の作業をほぼ満足できる形で遂行した。その成果は、これも「研究実績の概要」に記した通り、ともに『近世文芸研究と評論』101(2021年11月)に公表ずみである。2年目以降は、この2つの作業の継続を主たる研究課題と設定し、推進していくことにしたい。 そして、その2つの課題を進める中で、とくに②の「俳人大観」が構築されていくのを利用する形で、①の「俳書仮目録」を作成していくことにしたいと考える。どの期間を対象にするかという問題はあるにせよ、近世中期の「俳書目録」ができれば、研究者の便宜にはなるはずで、その利用価値は高いに違いない。対象となる期間は十全でなくても、精度の高い「目録」をめざし、調査・研究を進めていきたい。 念願の俳書調査に関しては、感染症流行の状況を見ながら、適切な範囲・方法で行っていくことにしたい。
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Causes of Carryover |
予定していた調査旅行を断念したことが、最も大きな理由である。また、連句注釈のために、メンバーが集まって研究会を開くこともできず、そのために確保しておいた旅費も未使用に終わった。後者については、オンラインでの会議を開催し、相応の手応えは感じたものの、やはり対面しての研究会が望ましいと考える。前者に関しては、その代替として、俳諧資料の複写を取り寄せることに注力した。今年度もこれを続けていきたいと考えており、次年度使用になった金額は、多くそれに使いたいと考える。 また、データ処理のためのPC購入を控えたことも、1つの理由になる。OSが変更になるとの情報を元にした措置で、2022年度は必ず購入する予定である。
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Research Products
(10 results)