2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K00459
|
Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
奥村 和美 奈良女子大学, 人文科学系, 教授 (80329903)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 万葉集 / 長歌 / 初学書 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、1~Ⅲのアプローチのうち、Ⅱの「家持と同時代の作品、巻16の長歌作品と比較対照することによって、家持長歌の表現の特質を考察し家持長歌を相対化する視点を得る」ことを重点的に行った。「巻16全注の会」において、担当箇所の注釈内容について継続的に発表を行い、問題点をメンバーと共有・討議した(申請者の発表は、2021年3月4日-3867番歌、5月29日-3811番歌、9月23日-3812~3813番歌、12月4日-3810番歌)。そこで、巻16の和歌に、初学書『孝経』や『論語』の一節を踏まえた表現のあること、左注の文章に初唐伝奇小説『遊仙窟』や『捜神記』を利用した表現があり、歌を物語的な場において理解しようとする態度や、部分的にだが書儀語の利用が見られることなどを明らかにした。また、巻16作品の享受者である下級官人の興味関心が、表現に大きく影響していることも明らかにした。これらの成果の一部を、論文「『萬葉集』巻十六・三八五七番歌考――『遊仙窟』という趣向――」(『第17回若手研究者支援プログラム 萬葉集巻十六を読む 報告集』奈良女子大学古代学・聖地学研究センター 2022年2月 95-110頁 )としてまとめ、公表した。これは、アプローチⅠ「中国詩文からの表現の摂取、特に、知識人の教養となった初学書や奈良朝に流行した小説、或いは書儀・書簡などの実用書・通俗書の利用の跡を具体的に探る」という点にも関わって、巻16の諸作品の作者や享受者だけでなく、大伴家持の教養の基盤にあるものをも具体的にあぶり出すことに成功したと言える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
『万葉集全注 巻16』を2022年度中に刊行することとなり、巻16注釈作業に多くの時間をさいたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
巻16の注釈作業も一方で進めつつ、そこから得られた知見を家持の長歌研究に積極的に活かしていく。
|
Causes of Carryover |
コロナ感染拡大によって、学会研究会等がオンライン形式となり、旅費が不要となった。また、2022年度に一括購入を考えている大部の図書があり、2021年度はすでに購入済みの図書を活用したため。
|
Research Products
(1 results)