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2022 Fiscal Year Research-status Report

An Archive and Linguistic Study of Oral Culture in Pingjiang, China

Research Project

Project/Area Number 21K00476
Research InstitutionShizuoka University

Principal Investigator

張 盛開  静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (00631821)

Project Period (FY) 2021-04-01 – 2026-03-31
Keywords平江方言 / 口承文化 / 夜歌 / 葬儀 / 歌謡
Outline of Annual Research Achievements

R4年度は引き続き主に手元の資料、夜歌(葬歌)と歌謡の整理に専念した。それ以外に平江方言の全体像が分かるように方言の例文を集め、整理と分析を行った。詳細は下記の通りである。
4-6月は文字化済みの夜歌の歌詞データの整理と分析を行った。7-8月はテキストの追加入力と分析を行った。その結果合わせて計90,000字の歌詞データとなり、夜歌のコーパスとして整備した。9-10月はこれらの歌詞を対象にその音韻と語彙について分析を行った。その分析結果をまとめ、第5回湘語国際学会にて「平江夜歌の言語及び文化特徴」というタイトルで招待講演を行った。10-12月は地元平江方言の自然な例文を集め、整理と分析を行った。平江方言の簡単な概説をはじめ、「受動表現、アスペクト、モダリティ、ヴォイスとその周辺、所有と存在表現、他動性、連用修飾的複文、情報構造と名詞述語文、情報表示の諸要素、否定、形容詞と連体修飾複文」のように10のカテゴリから方言の例文を約400集め、分析を行った。漢語標準語とは発音から語彙や文法まで異なる平江方言のこれらの特集の例文は英語のグロス付きな形で逐語分析しており、これが初めて一般公開される平江方言のまとまった分析済みの例文となる。1-2月は手元にある歌謡の文字化、整理と分析を行い、計90,000字の歌謡のコーパスを整備した。3月は10月に行った発表の内容を論文にまとめた。今後投稿する予定である。この論文は夜歌の歌詞について言語学的に分析した初めてのものであり、実際の葬儀で採録したデータと書かれた歌詞本の両方を研究対象にしていることから、網羅的に地元の言語と文化についての特徴をまとめることができた。夜歌は地元の人々の暮らしを表現し、その歌詞には方言語彙と習慣も多く見られた。例えば、儀式があるたびに、お茶入れ専門職「茶女士」がいることや喪主は「麻衣」(麻の喪服)を着用することなど。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

今年度は主に夜歌歌詞の文字化と追加入力や整理及び分析を行った。歌詞を5万字増やし、計9万字になった。これらの資料をコーパスとして整理し、韻脚と声調について詳しく分析した。更に歌詞に使われている方言の語彙に対する分析も行った。夜歌の歌詞は基本的に七言四韻で、書面語が多い中、会話で使う語彙も多々見られた。伝統的な歌詞は真面目で、典故を多用しているが、会話の形式で歌っていく「雑口」では、相手やその家族のことをからかうことでその場の雰囲気を和ませる役割を果たしている。歌詞の内容には歴史的なものや地元の地名や習慣を盛り込むものも多くみられる。更に歌詞から地元の習俗習慣も見ることができた。例えば、困った時は神やご先祖に「問罫」(罫を問う)という形でアドバイスをもらうことや子供が生まれたら「報喜」(父親が嫁の実家へ子供が生まれた喜びを報告する)をすることなどである。
歌謡に関しては、これまで録音から文字化したデータが約9万字あり、それをコーパスとして整備したので、今後はこれらのコーパスを用いて、歌謡の言語と文化特徴を分析することができるようになった。
本研究での分析資料はすべてこれまで本人がフィールドワークにて収集したものである。今年度も引き続きコロナウィルスで海外出張やフィールドワークに行けない中で、手元の資料の整理と分析に専念できた。整理や分析の過程において、必要に応じて、SNSを通してインタビュー調査やアンケート調査を実施した。国際学会での報告を通して、研究成果の提示や情報交換ができた。
本研究課題は地方口承文化の夜歌、童謡、歌謡、地方劇、影劇、蓮花落などを5年間で研究や保存を行う予定のものであり、令和4年度は上述のそのうちの二つ夜歌、歌謡についてデータ収集や研究を行い、論文1篇完成し、学会発表を一回行ったので、予定通りに進行できていると考え、進捗状況を概ね順調とした。

Strategy for Future Research Activity

R5年度は夜歌の論文を学術誌に投稿する予定である。それから引き続き手持ちのデータの整理と分析を行う。平江以外の地方の資料として、手元にあるのは臨湘地方の音声データ(約300分間)であるが、地元の方の力を借りてその文字化を行う。臨湘地方の歌詞本も5冊持っているので、そのデータベース化を加速する。 さらに中国各地の葬歌についての動画があり、それらのデータ収集及び文字化や整理もできれば進めていきたい。それが整理できれば次は各地の葬儀音楽やテキストの比較を行いたい。
海外出張でフィールドワークに行けるようになってきたので、夏に湖南省平江地方を中心に、口承文化に関する映像、音声、テキストデータを現地で収集する予定である。地方口承文化が衰退されつつある状況の中で、伝承者や一般人へのインタビューやアンケート調査を通して、各地の口承文化の伝承現状などについても調べる。 全体的な研究としては、平江口承文化における押韻状況を調べたい。主に童謡、夜歌、歌謡、蓮花落などのテキストに見られる方言特徴を実際に話されている方言の口語と比べ、その相違を明らかにする。
R5年度は「地方口承文化にみられる言語や文化的特徴」をテーマに中国各地の口承文化に関する国際シンポジウムを開催したい。中国国内の口承文化伝承者や研究者を日本に招聘し、中国の口承文化について情報交換する予定である。同時に、日本の社会にも中国の口承文化を知っていただくために、歌謡、夜歌、影劇などの伝承者によるパフォーマンスも考えている。
今後は継続的に口承文化に関するデータの収集を行い、各地のジャンル別の口承文化と比べてその言語及び文化的面からの相違を明らかにする。さらに、各地の口承文化に対する研究を通して、方言と文化、方言と文化の伝播、方言と文化の関係について研究していく予定である。

Causes of Carryover

コロナウィルスで海外に行けなかったため、現地調査の実施や国際学会の現地参加ができなかった。その結果旅費の消費が次年度となった。

Remarks

語学研究所論集27号
http://www.tufs.ac.jp/common/fs/ilr/contents/ronshuu.html

  • Research Products

    (13 results)

All 2023 2022 Other

All Journal Article (10 results) (of which Peer Reviewed: 10 results,  Open Access: 10 results) Presentation (2 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results,  Invited: 2 results) Remarks (1 results)

  • [Journal Article] 漢語平江方言について2023

    • Author(s)
      張盛開
    • Journal Title

      語学研究所論集

      Volume: 27 Pages: 269-280

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Journal Article] 漢語平江方言における受動表現2023

    • Author(s)
      張盛開
    • Journal Title

      語学研究所論集

      Volume: 27 Pages: 281-288

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Journal Article] 漢語平江方言におけるモダリティ2023

    • Author(s)
      張盛開
    • Journal Title

      語学研究所論集

      Volume: 27 Pages: 289-300

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Journal Article] 漢語平江方言におけるヴォイスとその周辺2023

    • Author(s)
      張盛開
    • Journal Title

      語学研究所論集

      Volume: 27 Pages: 301-308

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Journal Article] 語学研究所論集2023

    • Author(s)
      張盛開
    • Journal Title

      漢語平江方言における所有と存在表現

      Volume: 27 Pages: 309-318

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Journal Article] 漢語平江方言における他動性2023

    • Author(s)
      張盛開
    • Journal Title

      語学研究所論集

      Volume: 27 Pages: 319-332

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Journal Article] 漢語平江方言における連用修飾的複文2023

    • Author(s)
      張盛開
    • Journal Title

      語学研究所論集

      Volume: 27 Pages: 333-342

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Journal Article] 漢語平江方言における情報構造と名詞述語文2023

    • Author(s)
      張盛開
    • Journal Title

      語学研究所論集

      Volume: 27 Pages: 344-350

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Journal Article] 漢語平江方言における情報表示の諸要素2023

    • Author(s)
      張盛開
    • Journal Title

      語学研究所論集

      Volume: 27 Pages: 351-359

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Journal Article] 漢語平江方言における否定、形容詞と連体修飾複文2023

    • Author(s)
      張盛開
    • Journal Title

      語学研究所論集

      Volume: 27 Pages: 360-365

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Presentation] 平江夜歌の言語と文化特徴2022

    • Author(s)
      張盛開
    • Organizer
      第五回湘方言国際学会
    • Int'l Joint Research / Invited
  • [Presentation] 中国の方言2022

    • Author(s)
      張盛開
    • Organizer
      東華大学(上海)による「漢語橋」オンライン留学プログラム開校式
    • Invited
  • [Remarks] 漢語使者の研究室

    • URL

      https://wwp.shizuoka.ac.jp/hanyushizh

URL: 

Published: 2023-12-25  

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