2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K00543
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
磯貝 淳一 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (40390257)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 和化漢文 / 変体漢文 / 書記言語 / テクスト機能 / 助字 / 接続詞 / 仏教漢文 / 日本語史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、平安時代後期から鎌倉時代における仏教漢文の文体特徴の解明である。令和4年度は、これまでに記述し得た和化漢文の言語事象に基づいて、「文体特徴の記述」に関わる成果をまとめた。 まずは、東寺観智院蔵『注好選』を対象に、原拠(中国古典文の対照資料)に清家文庫蔵『孝子伝』を選定し、両資料の同文的本文における助字、接続詞について、漢文の「和化」の実態を明らかにした。①『注好選』成立の過程で、文末助字「也」、接続詞「即」「時」が添加される例が認められた。② その基本的用法は、原拠である中国古典文に沿った用法を受け継ぐものであるが、和化漢文(唱導の場における手控え的性格を有する資料)においてこれらが多用された理由は、説話の内容とその展開を明確に示す機能の必要によると考えられる。③ 「也」については、体言承接において助動詞「ナリ」との結びつきが想定される一方で、用言承接(不読)例も多く認められ、文末(話題末)の表示機能を担う。④ 「即」「時」については、時系列に沿って進む話題のまとまりと展開部を示す働きを担う。 また、醍醐寺蔵『探要法花験記』を対象に、文末助字「也」が「テクスト機能」を持つことが、和化漢文の説話に見られる特徴であることを明らかにした。① 説話の展開部に使用される助字「也」/結末部で使用される助字「矣」は、一文の範囲を超えて文章中のまとまりにおいて現れるテクスト機能を持つと考えられる。② 説話の構成要素としての話題をまとめる機能を持つ「也」は、話題を展開させる接続語と共に説話テクストを構造化する。③ 助字「也」のこうした機能は、目的・場を異にする他の和化漢文には見られない場合がある。和化漢文の分類指標となり得る事象と認められる。④ 助字および接続語の添加に見る「和化」は、情報を構造化して蓄蔵する性格を持つ「書記言語の史的展開」と関わっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究成果の公表は果たしたものの、当初予定に掲げた基礎的調査・基礎資料作成は遅れている。コロナ禍以降、原本調査の環境が従前の状況には戻りきっていないことの影響によるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に向けて、調査を完了した資料についての「文体特徴の記述」「仏教漢文の再定位」を進め、成果の公表を目指す。同時に基礎的調査研究については、これまでに明らかにし得た和化漢文の言語事象から、重要な文献を調査対象として絞り込み、再設定した調査範囲での研究成果を確定できるよう努める。
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Causes of Carryover |
令和4年度は、原本調査とそれに基づく基礎資料の作成において計画の遅れが生じた。コロナ禍以降の文献調査に関する環境が従前の状況には戻りきっていないことの影響によるものである。このために計上したいた調査関係旅費、データ整備関係費に未使用額が出ている。 次年度は、調査が適わなかった地点での調査を進める。同時に、東京大学史料編纂所等に所蔵される撮影済みデータ等を利用した調査研究も行うことで、直接調査を行うことが難しい文献についても研究を進める環境を整えることとする。
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Research Products
(2 results)