2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K00807
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
胡 潔 名古屋大学, 人文学研究科, 名誉教授 (30313399)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 家族史 / 父子別居 / 父子継承 / 養子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本古代、中世の「家」の形成過程及びその構造、特徴を解明することである。これまでの家族史研究において、当該期に見られる父子兄弟の別居慣行と父系継承の「家」の形成の相関関係に関する検討が不十分である。この空白を埋めるために、本研究は婚姻居住上の父子別居と父子継承による永続性の「家」の関係に着目し、両者の相関関係および特徴の解明を目指す。研究計画では初年度の今年度から平安期、鎌倉期の史料調査を行う予定であったが、新型コロナの感染拡大の影響により、オンライン授業や学内業務に追われ、当初予定していた計画の遂行が困難な状況になった。そのため平安期の記録及び文学作品に関する資料調査を優先した。『権記』、『御堂関白記』、『小右記』、『春記』、『殿暦』、『中右記』などの古記録を中心に、本研究課題に即し、①門流意識、②父子、兄弟間の連携、③養子に関わる内容をピックアップしつつ、分析を行った(継続中)。調査を通じて、貴族官僚の「家」の観念は、主に官位官職及び官人として持つべき有職故実の伝承を通じて形成されたことを確認できた。特に『小右記』における「一家」の用法に藤原師輔の子孫である道長一家に対する対抗意識が見られることが興味深い。また平安期の養子縁組は父系親の間で行われたものが大半を占めており、居住上または生活上における母方親類との緊密な関係と対照的である。養子縁組の目的は養子の叙位上有利になることを図ることであり、父系社会で言う「家の継承」とは異なる性格を持つものである。しかし、藤原実頼と藤原実資の養子縁組の例が示したように、養父が養子に叙位上の有利条件を与えたことのみならず、官人として持つべき朝廷の儀礼の知識をも継承させている。その知識は小野宮系の「一家」の形成の一端を担うものである。平安時代の養子に関する調査内容について、第七回日韓国際学術大会にて口頭発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1)新型コロナウイルス流行にともない、資料調査が不自由になったため支障が生じた。 (2)大学でオンライン授業が行われたことで授業負担また業務が増大し、エフォートが下がったため、計画当初予定していた鎌倉期の資料調査が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の進捗状況を踏まえ、次年度の前半は鎌倉期の記録類の資料収集・調査を行う予定である。後半は調査内容を通史的に分析し、日本古代・中世の「家」の構造と特質の解明を目指す。新型コロナウイルス流行がなお続いており、出張や対面式の研究交流の機会が少ないことが予想されるが、オンライン会議システムを利用し他の研究者の意見を聞く機会を持つ予定である。新型コロナウイルスの感染状況が好転すれば、計画当初予定の資料収集・調査を始めるつもりである。
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Causes of Carryover |
今年度の続きを行い、鎌倉期の記録類の資料収集・調査を行う予定である。調査による旅費や資料整理、校正作業に関わる人件費、専門家の情報提供に関わる謝金、日本古代、中世の研究文献の購入、などを予定している。
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Research Products
(1 results)