2023 Fiscal Year Research-status Report
What did Britain have to cover up? Destruction and concealment of colonial records: a cross-regional analysis of Operation Legacy
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21K00814
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
佐藤 尚平 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (70597939)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 帝国 / 記憶 / 歴史認識 / 忘却 / 文書管理 / Displaced Archives |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画は、20世紀にイギリス帝国が世界各地で行った文書隠蔽工作に注目し、イギリスが何を隠蔽しようとしたのかを検討している。本計画の核になるのは、かつてイギリスが世界各地で隠匿し、秘密裡に本国イギリスに移送した「移送文書群 Migrated Archives」の分析である。移送文書群は、現在はイギリス国立公文書館でFCO 141というファイル番号を与えられて公開されている。 本年は、まず、これまで行ってきた移送文書群の検討をさらに進めることができた。今回特に注目したのは、マラヤやシンガポールなど東南アジア関係の史料である。それに加えて、本年は、イギリス以外の地域でも調査を行い、旧植民地等に残された史料との照合にも踏み込んで大幅に研究を推進することができた。例えば、このテーマでは委任統治期のパレスチナはこれまでは等閑視されてきたが、パレスチナに残された史料の中にイギリス帝国による文書隠蔽工作の初期段階についての重大な手がかりが発見されたのは、今回の大きな成果である。さらに、イギリスの文書隠蔽工作を世界的に位置付けるために、様々な事例と比較することが重要であることも確認された。これまでヨーロッパ諸帝国との比較が行われることはあったが、私が特に注目しているのは、帝国期の日本の事例である。こうした視点からも、研究成果を世界各地の研究者と共有することがますます重要になっている。こうした問題意識からイギリスなどの研究者と共同で国際会議を開催することを目指して準備を進めることが出来たのも、本年の成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の狙い通り移送文書群の検討を進め、旧植民地に残された史料との照合を行うことが出来た。さらに、これまで得られた成果を世界各地の研究者と共有するために国際会議を開催することに向けて準備を進めることも出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、これまで渉猟した史料の検討をさらに進めたい。各地域の研究者と研究交流を進めながら、分析を精緻化したい。また、イギリス以外の事例との比較検討にも視野を広げつつ、イギリスの事例を世界史的に位置付けていきたい。さらに、現在準備を進めている国際会議についても、さらに準備を固めて、実施に向けて歩みを進めたい。
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Causes of Carryover |
次年度に海外調査を予定しているため。
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