2021 Fiscal Year Research-status Report
9~13世紀の北アジア諸民族国家における多民族共生社会成立の歴史考古学的総合研究
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21K00818
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Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
高橋 学而 大谷大学, 真宗総合研究所, 研究員 (90896432)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 東北ユーラシア / 渤海、遼、金 / 女真 / 少数民族 / 仏教寺院 / 仏塔 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年4月の研究計画開始より、大谷大学所蔵の旧満州国当時の考古・地誌資料、明治期の北方ユーラシアに於ける各種探検記と、現在の中華人民共和国の調査報告との照応を行った。その際、遺漏のないよう、研究経費で購入した中国考古学年鑑、各種学術雑誌で確認を行った。近々発表予定の東北ユーラシアに於ける仏塔、仏塔遺跡のリストアップはその成果の一つである。また、ロシア共和国の極東地域に於ける考古・歴史・民族研究の中心的研究機関である、ロシア共和国科学アカデミー極東支部極東諸民族歴史・考古・民族学研究所の研究成果を主に、ロシア極東沿海州地区の考古・歴史系の論考23編を既に翻訳した。翻訳のみであるため、こちらは目下発表する予定はないが、以上のように2021年度は調査の基礎資料の充実に大いに努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年末以降の全世界的コロナ禍の蔓延、2022年2月に始まったウクライナ戦争の影響で、計画年度の当初に予定していた中国・ロシア内の研究対象地域の現地調査は後送りせざるを得なかった。しかし、同時に予定していた当該地域の研究水準の確認、ならびに問題点の析出という目的は、明治期の我が国の、また満州国当時の調査報告の確認とともに、中国文論文・露文論文の翻訳を進めることによって予定通りの進捗を示した。とりわけロシア沿海州に於ける金代女真の考古遺跡についての調査報告は、現在我が国では全く紹介されておらず、既に訳出した23編の論考は、研究の推進に大きな意義を有する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画の円滑な進行は、中国東北部に位置する黒龍江省・吉林省内、また、ロシア共和国極東地方の沿海州地方に於ける対象地域の実地調査、また現地研究者との交流に支えられる側面を有している。従って、目下の世界情勢(コロナ禍、ウクライナ戦争)が、計画推進に一つの障害となるのは否めないものの、当該地域の海外研究者との交流は現在も行っており、同時に、数多くの両国の調査報告に基づいて研究を行っている。今後も、中国人民大学、またロシア共和国ロシア科学アカデミー極東支部に在籍する研究者と緊密な連携を取りつつ現地研究者の研究成果を活用し、一方、これらを明治期の、或いは満州国時代に公刊された考古・地誌とも照応しつつ研究を進め得ると考えている。研究計画第2年目である2022年は、おおよそ第1年目の研究方向の充実を基本とし、これに国内でのコロナ対策の変化に対応し、国内での各研究機関への訪問を行い資料・知見の集積に努める。
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Causes of Carryover |
世界的なパンデミックの蔓延、とりわけ中国政府のゼロコロナ政策により研究対象地域の中国東北部での調査が実施出来なかった。また、我が国での流行により、移動が制限され、或いは自粛したことにより、国内での会議、研究会への参加がなく、移動交通費が抑えられることとなった。2022年度は、国内の現在のコロナ終息の傾向から、国内での諸会議、並びに資料収集のため国内移動の機会が増えることが予想される。その移動交通費に当てる予定である。また、2021年度は中国での考古調査報告の収集整理に重きを置いたが、2022年度は、ロシア科学アカデミー極東支部刊行の報告を中心にロシア刊行の資料の購入に当てる予定である。
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