2021 Fiscal Year Research-status Report
Questioning the dominant view of archaeology with digital technology
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21K00821
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Research Institution | Hakodate National College of Technology |
Principal Investigator |
近藤 司 函館工業高等専門学校, 生産システム工学科, 特任教授 (40292049)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 誠 函館工業高等専門学校, 生産システム工学科, 教授 (20210479)
小林 淳哉 函館工業高等専門学校, 物質環境工学科, 教授 (30205463)
川合 政人 函館工業高等専門学校, 生産システム工学科, 准教授 (70511278)
中村 和之 函館工業高等専門学校, 一般系, 特命教授 (80342434)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 考古学の常識 / デジタル技術 / オホーツク文化の帯金具 / 遺物の復元 / 非接触3次元形状計測 / 座標系の一致 / 画像データ / 形状照合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は(a)考古学、(b)機械工学、(c)無機化学の全く異なる三つの研究分野を組み合わせながら、考古学遺物の研究に新しい可能性を示すものでありその研究対象として、オホーツク文化の遺物、北海道で発掘された帯金具としているが、文化財として指定されると遺物の移動が難しく、それらの形状に関する研究ももっぱら実測図や写真などで行う定性的、感性的な研究であり、客観的評価がなされていなかった。これについては、従来の常識をデジタル技術によって再検討するという意味では、これまでに全くなかった研究である。またレプリカの作成と共有、実験考古学的な手法の導入などは、一度計測データを得てしまえば技術的な実現はさほど困難ではない。 当該年度で実施した研究成果を整理した。1)帯金具の表面形状情報を非接触3次元形状測定機により3次元位置情報を取得した。これにより、直接実物に接触する必要がなくなるため、以後の複製や修正などデータ処理や部分抽出が容易となり研究を進める上で機能性が向上した。2)3次元形状情報を基に3Dプリンタによるレプリカを作成した。数値データだけでは視覚的、定性的な部分が分かりにくく、そのためのレプリカ作成は視覚的にも触覚的にも有用であると言える。3)本テーマの肝の部分である形状間の類似性について定量化する部分では、1)の位置情報を基に、まず形状データ構造の変換、座標系の一致手法を試みた。1)で得られる形状データは点群座標であり、測定物ごとに独立した座標系をもつ、それを同一座標系へ変換しやすくするためデータ構造を同一化した、まず測定した形状データを必要精度で格子化し、その高さ情報をもつZマップ構造へ変換し、その後高さ情報を適当な分解能で量子化し類似の画像データへ変換した。これにより、形状情報を保存したまま色の濃度値をもつ画像として表現することが可能となったため、視覚による確認が容易となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに実施してきた研究について、オホーツク文化の遺物であり今まで発掘された帯金具5つを非接触形状測定機によりその表面の形状データを点群によりデータ化することができている。それらについて、1)形状の復元作業と2)形状照合処理の観点で研究を進めた。 1)発掘された遺物形状を確認するために、形状の復元(レプリカ作成)を試みた。非接触3次元測定データと3Dプリンティング技術により模型を作成し、それを木型の代わりにして鋳物砂8号の鋳型を作成した。アルミニューム合金を用いて鋳物作成に関する問題点の洗い出しを行った。そこでは、穴部分の復元、すなわち鋳物砂の性質が鋳型製作との関連が理解できた。 2)形状照合について、遺物形状は3次元測定機に対して個々に測定されているため、その座標系もまた個々に設定されている。測定データは点群であるため、それをXY空間内で0.1mmピッチとなるように格子データへ変換をした。また、遺物のZ方向の厚みは10mm以内であるためそれを256分割で量子化することによりZ方向の分解能0.04mmとなるように変換し、それらは画像に用いられているBMPファイルで保存した。そのため、測定形状は輝度情報へ変換され(赤、緑、青のいずれか)視覚的にも確認できるようになった。 形状照合は2つの遺物間で行うことを前提として座標系の一致を試みた。その基準として、各帯金具に共通して存在する特徴部分(たて長の穴など)に着目した。特徴部では輝度値は0であるので、2つの遺物の特徴部が最も重複する姿勢と位置を探索することにした。 今回、どちらか一方に対して、姿勢の調整をZ軸周りに固定しその分解能は0.2度および位置の調整はXY空間内で分解能を0.1mmに設定した。これにより、両者の座標系は姿勢・位置を考慮した一致が可能になり、今後はそれらの同一位置における座標照合が可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の研究進行状況を鑑みて今後は以下について研究を進める予定である。 1)遺物(帯金具)の形状復元に関する研究を行う。令和3年度の研究では、鋳物砂の種類・水分量により砂型の成形精度が異なることが明らかとなった。特に鋳物砂の細かさは鋳物の表面性状にも大きく影響を与える。さらに、模型形状の抜き勾配の検討が必要であり、鋳物砂との関連で最適なものを実験により求める。また、令和3年度は我々が鋳造ノウハウをもっている比較的低温で溶融するアルミニューム合金により造形を行ってきたが、実物は青銅であるためその原料の違いによる復元技術の難しさを明らかにし、最終的には青銅を用いた遺物形状の復元を試みる。2)その際、青銅の成分分析に基づき銅とスズの割合を求め、実物に近い青銅材質の抽出を試みる。3)踏み返しの回数と鋳物形状との関連を実験により調査する。作成した鋳物を模型にして砂型を作成、鋳込み、鋳物を作成する手順を複数回繰り返すことに寄り、鋳物形状がどのように変化するのかを実験することにより確認する。4)形状照合法について検討する。令和3年度までに、非接触3次元形状測定機で測定した形状データの座標系の一致処理までできている。続いて2つの鋳物(帯金具)形状の表面模様を含めた一致具合を数値化することにより照合率を求める。その際、形状データを観察すると模様は鋳物表面に彫り細工形状していることが分かっておりそれらは全体形状に対して凹部分の存在として数値化することができる。今後の研究では、座標系の一致後、それぞれの凹部分の抽出しその比較により模様を含めた照合率を提案し、その定量化について試みる。5)このような工学的な手法により進められて研究によって明らかになった事実を、考古学者と共有し、北東アジアの出土例との比較を試みる。
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Research Products
(1 results)