2021 Fiscal Year Research-status Report
近世近代・公私文書を通貫した意思決定慣行に関する総合的研究
Project/Area Number |
21K00827
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
籠橋 俊光 東北大学, 文学研究科, 准教授 (00312520)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小幡 圭祐 山形大学, 人文社会科学部, 准教授 (30770127)
加藤 諭 東北大学, 学術資源研究公開センター, 准教授 (90626300)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 日本史 / 史料研究 / 意思形成 / 組織形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は令和3年9月21日に第1回研究会を開催し、初年度における研究代表者・研究分担者の調査・研究計画の検討と問題関心の共有を行うことにより、以後の研究方針の確定した。令和4年3月24日に第2回研究会を開催し、研究状況を相互に把握しつつ意見交換に努めた。各担当の研究実績について、近世では、近世公私文書による意思決定過程を藩政・地域社会2つのレベルで検討した。前者は仙台市博物館所蔵伊達家文書を調査し、18~19世紀段階の藩政文書の性格把握と仙台藩書札礼の解明を進めた。後者は水戸藩中間支配機構発給の文書類を検討し、藩施策への中間支配機構の対応を検討した。 近世・近代移行期では、行政官庁である内務省と大蔵省について検討を行った。内務省については、内務卿・大久保利通の具体的政策関与の実態を検討し、大久保が付箋の活用によって自身の意向を政策に盛り込んでいたこと、また、部下と意見が対立した場合に、部下が内務省の公文書を私文書化することにより案件を闇に葬ったことを解明した。大蔵省については、大蔵卿・大隈重信期の政策立案・意思決定の実態を検討し、字を書かない大隈は自らの意見を政策に盛り込むために立案者を重視するとともに、立案にあたっては個人による起案から組織・集団による起案へと変化したことを解明した。 近代では、大学自治と人事制度について、帝国大学期における営繕組織を事例に、往復文書、任免記録の分析をおこなった。東北帝国大学の営繕組織については、東京帝国大学工学部建築学科卒業生を中心とした人脈を軸として、彼らのキャリアパスの一つの通過点として位置づけられていたことを解明した。また戦後1960年代の大学紛争と大学改革に関する意思決定の沿革を考察する上で、戦後東京大学の本部機能が集約されていた安田講堂で総長選挙や諸会議がどのようにおこなわれていたのか、場の機能と文書を組み合わせて分析をおこなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍の移動制限等により史料調査の面では計画の見直しを迫られた部分はあったものの、分担者ごとに可能な範囲での調査・研究を行い、着実に実績を積み上げていることから、おおむね順調に研究を進展させているものと判断される。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、本年度の研究実績に感染状況等の諸事情をふまえて一部修正を加えた研究計画に基づき、さらなる史料調査や分析を進めていく予定である。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染状況下において、当初予定されていた出張等が実施できず、各自が旅費執行の発生しない範囲での調査・研究に従事したことにより、特に旅費において計画と大きな相違が発生した。次年度以降は感染状況の推移を見つつ、調査計画等を適宜見直し、特に前年度実施できなかった出張等を次年度計画に順次組み込むものとする。
|
Research Products
(7 results)