2021 Fiscal Year Research-status Report
近代日本の国家形成と「旧慣」調査-田代安定による沖縄と台湾の調査資料に基づいて
Project/Area Number |
21K00836
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
大浜 郁子 琉球大学, 人文社会学部, 准教授 (60459964)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 田代安定 / 「旧慣」調査 / 近代日本の国家形成 / 近代沖縄 / 近代台湾 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度にあたる2021年度は、COVID-19の感染拡大の影響により、台湾大学図書館特蔵室所蔵「田代文庫」の調査をはじめ、国内外の現地調査はすべて延期せざるを得なかった。しかし、すでにこれまでの国内外における調査・収集によって得られた田代安定の関連する史資料を目録に追加して、データを翻刻して電子データに関連づけ、さらに、これらを分析する作業を重点的に行うことで、現地調査を除く研究は着実に進めるように努めた。また、国内外に分散所蔵される関連史資料のうち、デジタル化された史資料についても、できる限り収集して、総合目録の完成に備えた。 本研究に接続する研究成果の一部が、国際シンポジウム論文集『第十一屆臺灣總督府档案學術研討會論文集』に掲載された(査読有)。 本研究の波及的な成果として、田代に関する拙稿を読んだ農学系の研究者(森林政策学)からの依頼により、研究代表者が田代の植物研究に関する一次史料の情報提供を行ったことによって、同研究者により沖縄や台湾等における「福木」という防風林の植物研究の成果が公刊された。 本研究に関わる国際的な貢献として、台湾の文化部(日本の文科省に相当)の助成により、研究代表者が専門的な立場から指導助言を行って完成した「牡丹社事件」のドキュメンタリー映像が、2021年10月に台北で試写会が開催され、その後、事件の発生地である台湾南部の国立大学を中心に教育機関などで先行上映されていることは特記しておきたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、(1)台湾大学図書館特蔵室所蔵「田代文庫」所収の「沖縄関係資料」を全文翻刻するとともに、特に、八重山諸島開拓「植民」に関する田代の建議が日本の沖縄統治政策とその後の台湾統治政策の形成過程において果たした役割を解明すること、(2)国内外に現存する田代関係資料を収集するとともに、それらに依拠して、田代が八重山で行った「旧慣」調査の方法と彼の「植民」論とが日本の台湾統治に連関性を有していたことを解明すること、(3)国内外に分散所蔵されている田代の関係資料をすべて網羅した総合目録を作成して、データベースを構築し、電子データ化することである。 この三つの目的のうち、(1)は草書体で書かれた史料の翻刻作業は、比較的順調に進んでおり、(2)は国内外の調査は行えないものの、これまでの調査・収集によって得られた史料の分析を通して、おおむね順調に進められており、(3)は(1)の作業に応じて進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度以降も、これまでの調査・収集で得られた台湾大学図書館特蔵室所蔵「田代文庫」所収の「沖縄関係資料」や国内外の関連史資料の翻刻と分析を継続しつつ、電子データと関連づけて、最終的な総合目録の完成に向けた作業を進める。 現状では、国内外の関連資料調査が実施できないため、新たな史資料の発掘は難しいところではあるが、研究代表者は、これまでいくつかの資料館や図書館に要望書を提出するなどして、田代関係資料のカラーデジタル化と公開を要請してきた結果、COVID-19の影響もあり、予想よりも早くこれらが達成されている史資料もある。そのため、次年度以降も、できる限りの方策によって、新たな史資料の発掘にも努めたい。 次年度は、本研究の中間報告として、台湾での国際会議(招待有)において、研究報告を行うことにより、本研究の方向性などに関する批評や助言を聴取して、以降の順調な研究の遂行をはかる。
|
Causes of Carryover |
COVID-19の影響により、国内外の旅費がすべて執行できなかったため、次年度使用額が生じた。次年度は、特に、旅費について、国内外の調査が可能な時期まで延長して、調査を実施して執行する予定である。しかし、次年度も、調査が行えない場合は、国内外に所蔵される関係史資料(デジタル資料を含む)の複写費や取り寄せのための郵送料、総合目録の完成に向けたデータベース構築の諸経費として執行する。
|
Research Products
(1 results)