2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K00841
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
山田 徹 同志社大学, 文学部, 准教授 (50612024)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 荘園制 / 室町時代 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である2021年度は、当初の予定通り、荘園・武家領主に関連する史料や文献を幅広く収集するという基礎作業を実施した。研究成果としては、本研究の前提となる諸問題を整理するものが中心となった。 まず、論文としては、「「室町時代」の地域性」(芳澤元編『室町文化の座標軸』勉誠出版、2021年)を公表できた。これは、「室町期荘園制論」で強調される「京都からの集団的な支配体制」という視角から列島内の地域差の問題を論じた「室町時代の支配体制と列島諸地域」(『日本史研究』635号、2015年)の論点をもう少し広い視野から整理したものである。本論文では、ある程度求心力を持った権力・支配体制が存在した地域(京都・畿内近国を中心とする諸国や、関東)と、身分秩序などの政治文化的なコードの問題でしか「室町時代」を説明できない遠国地域では「室町時代」のイメージがそもそも異なることを指摘しつつ、このような論点が時代区分という重要な問題にも関わってくることなどを示している。 また、口頭報告として、「室町期荘園制論と「守護所」」という発表もおこなった。従来、守護の一国支配の拠点である「守護所」については、守護公権論的な理解を前提にしつつ、都市論の観点から検討が進められてきたが、「室町期荘園制論」で強調される荘園・郷などの枠組という問題が、「守護所」を考えるうえで極めて重要であることを示すことができた。 このほか、いくつかの検討が進みつつあるところで、今後順次、何らかのかたちで公表することができると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記の通り2021年度は荘園・武家領主に関する基本情報を幅広く収集した。とくに、荘園・郷や武家領主に関して鳥瞰的・総合的な視野を獲得するため、かつて検討をおこなった足利将軍家の「御料所」の問題についてもう一度取り上げる必要があるという判断に至ったため、そのような史料収集に重点を置いた。史料収集自体はある程度順調であったと評価できるものの、残念だったのが、とくに年度の前半コロナ禍によって出張の機会が制限されたことである。本来、もう少し現地に行くことを考えていたが、出張回数を十分に確保することがかなわなかった。そのため、さしあたって上記のような評価としている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、申請同様に一国単位で鳥瞰的視点を獲得するために必要な史料の検討を進めるほか、前年度の作業の成果として「御料所」関連の論考を執筆する。コロナ禍などによって内容に変更が必要となる場合には、柔軟に対応することとしたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは、コロナ禍によって本来よりも出張の回数が制限されたためである。それによって、本来確認後に獲得する予定だった複写物・紙焼きなどについての予算執行も全般に遅れることになった。2021年度当初に比べて、2022年度は調査に出やすくなると考えているので、22年度は順次、必要な出張をおこないながら研究を進めていければと考えている。出張先は、当初の予定どおり東京、丹後、島根・山口などを考えているが、御料所の研究などに関連して必要と判断した地域への出張を柔軟におこなっていきたい。
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