2022 Fiscal Year Research-status Report
戦間期内務官僚による「官民一体」政策の形成過程―田澤義鋪の思想と活動を中心に―
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21K00843
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Research Institution | Kobe College |
Principal Investigator |
河島 真 神戸女学院大学, 文学部, 教授 (00314451)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 田澤義鋪 / 内務省 / 選挙粛正 / 大成 / 新政 / 政治教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年5月に、田澤義鋪研究を進められている鹿島市民図書館学芸員・高橋研一氏と面会し、日記の残存状況、高橋氏による筆耕状況についてご教示を得た上で、10月に佐賀県立図書館において、「田澤義鋪日記」1930年(1930年10月~1931年12月)、1933年、1934年、1935年、1936年、1937年、1939年の撮影を行った。またこの時あわせて、カード式の「人名簿二」(田澤自身が作成したと思われる)を発見し撮影を行ったが、五十音順の「ハ」以降しか納められておらず、残りは「人名簿一いずれも」に納められているものと思われるが、残念ながら現存していない可能性が高い。これらは、田澤の思想と人的ネットワークの解明に有益な史料である。 2022年1月と3月の2度にわたって、日本青年館公益事業部において、田澤が発行していた雑誌『大成』『新政』の撮影を行い、分析を進めた。昨年度調査分と合わせて、1920年1月から1935年6月までの『大成』と、1924年1月から1927年12月までの『新政』の撮影を終えられたことで、現段階で国内で確認できる限り(一部未発見のものもあり)の『大成』『新政』のほぼすべてを網羅することができた。 1924年1月号を創刊号とする政治教育雑誌『新政』が、1928年1月から『大成』に統合されたことは昨年度に明らかにしたところであるが、その『大成』が1935年6月号で廃刊となったのは、田澤のめざす選挙粛正が同年から内務省主導の選挙粛正運動として実現したことがきっかであったことが新たに明らかとなった。『大成』編集・発行の実務を担った横山正一が内務省の嘱託となると同時に、選挙粛正中央連盟の幹事となったことも、この事情を明らかにしている。田澤の関心が青年教育から政治教育へのシフトする過程で、内務省の動きに改めて深くコミットし、政策決定に大きな影響を与えている様相が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の影響で、佐賀県立図書館及び日本青年館公益事業部における史料調査が年度の後半にずれ込んだことにより、その分析がやや遅れている。 他方で、当初は想定していなかった田澤作成のものと思われる人名録が発見されるなど、本研究の目的のひとつである田澤義鋪を中心とする人的ネットワークの解明に有益な作業を行うことができた上に、個人で収集したものも含めて、一部未発見のものがあるものの、『大成』『新政』のほぼ全部を撮影を完了し、内務官僚の「官民一体」政策の内実を探るという本研究の主要課題への見通しを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
①「田澤義鋪日記」の筆耕及び分析の継続、②『大成』『新政』の記事及び執筆者データベースの作成の継続、③『田澤義鋪選集』(田澤義鋪記念会、1967年)など田澤の著作のさらなる読み直し、④丸山鶴吉、後藤文夫など田澤と行動を共にした内務官僚たちの著作分析を進め、本課題研究の最終目標である当該期内務官僚の「官民一体」政策解明のための研究成果のまとめに取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
史料収集が遅れたため、収集史料の整理及び分析に執行予定だった人件費と、そのための消耗品費が未執行となった。これは次年度の作業を急ぐことによって使用する予定である。
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