2021 Fiscal Year Research-status Report
Comprehensive study of the Kamakura Shogunate Gokenin multi-layered system by exhaustive collection of cases and field survey
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21K00847
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
清水 亮 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (90451731)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
守田 逸人 香川大学, 教育学部, 准教授 (10434250)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 惣地頭ー小地頭制 / 関東御領 / 鎌倉幕府特権的支配層 / 地頭代 / 在来地頭・御家人 / 鎌倉幕府御家人重層配置体制 / 荘園制 / 地域社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、単一所領に複数の鎌倉幕府御家人が重層的に権益を有し、彼らが荘園制・地域社会に関わる体制を「鎌倉幕府御家人重層配置体制」と呼び、①A九州において惣地頭-小地頭制が採られた事例、①B九州以外の地域における広域所領の地頭と当該所領内の在来地頭(あるいは地頭職を持たない御家人)との併存がみられる事例、②関東御領(預所ー地頭関係など)、③鎌倉幕府特権的支配層の所領のうち地頭代が御家人である事例の3類型(ないし4類型)に分類し、『鎌倉遺文』およびその補遺編、『吾妻鏡』、『中世法制史料集第一巻 鎌倉幕府法』、『南北朝遺文 中国・四国編』・『南北朝遺文 九州編』・『南北朝遺文 東北編』・『南北朝遺文 関東編』等の検索によって、各事例を抽出・整理する作業を進めた。 また、「鎌倉幕府御家人重層配置体制」と地域社会との具体的な関係を、現地景観復元と関連づけて明らかにするフィールドの候補として肥前国彼杵荘福田村(長崎県長崎市福田地域)をリストアップし、現地調査を実施した(2022年3月16~19日)。現地調査にあたって、長崎県長崎市福田地域に該当する明治期の絵図・公図、および現在の長崎市基本図を入手し、福田村故地の範囲、中世城館跡、寺社所在地、土地利用状況等を確認した。当該地域については2022年度以降も調査を継続する予定である。 これらの作業と関わって、単一所領に複数の御家人が重層的に権益を有している事例の①Aに該当する肥後国人吉荘・肥前国彼杵荘を題材とした論文を発表し、(惣)地頭の支配が受容あるいは排除される契機を具体的に明らかにした(「東国地頭支配の受容と排除」〈田中大喜編『中世武家領主の世界』勉誠出版、2021年8月〉)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、研究課題申請当初に構想した類型に概ね準拠し、①A九州において惣地頭-小地頭制が採られた事例、①B九州以外の地域における広域所領の地頭と在来地頭(あるいは地頭職を持たない御家人)との併存がみられる事例、②関東御領(預所ー地頭関係など)、③鎌倉幕府特権的支配層の所領のうち地頭代が御家人である事例、という所領類型に即して複数の現地調査候補を選定し、予備調査を行う段階に位置づけていた。 しかし、新型コロナウィルス感染状況が改善しなかったため、2021年度の大部分の時期において出張自体を制限せざるを得なかった。結果として、実際に現地調査を実施できたのは、もともと最有力候補の一つとしていた肥前国彼杵荘福田村故地(長崎県長崎市福田地域)に限定された。当該調査にあたっても、聞き取り等をともなう現地調査へのご協力を地元の諸機関や住民の方々にお願いするのは差し控えざるを得なかった。 長崎市福田地域の現地調査については継続する方針であるが、その他の所領については、2021年度に予定していた予備調査の実施等を2022年度に行う方向に軌道修正する必要が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度に出張できる条件が制限されたため、現地調査の実施計画を再考する必要が生じている。2022年に入って出張機会自体はかなり改善されたが、聞き取り等をともなう調査の実施について、感染対策その他の配慮を必要とする状況は当面継続すると見通される。 したがって、2022年度は、上記の状況・見通しをふまえて現地調査を行うことになる。まず九州の惣地頭ー小地頭制が導入された所領の具体例である肥前国彼杵荘福田村故地については現地調査の継続をほぼ定めたので、調査を無理のない範囲で進める。そして、併行してその他の類型の所領における現地調査の実施候補地を選定し、やはり無理がない範囲で予備調査を実施する。 さらに、現地調査実施計画の見直しにともない、まず事例収集に充当する時間を増やし、粗々の事例目録(データベースの原型)の完成を早める方針をとる。その成果をふまえて、さきに提示した所領の類型に対応した特質の有無、時期区分の可否などを検討していく。現地調査の実施は、2023年度以降も社会情勢を見極めて進めていく予定である。 また、研究分担者の指導を得て、鎌倉幕府御家人の存在が見いだせない所領と、御家人が存在する所領との異同を検証する機会を持ち、幕府権力を一部組み込むことになった鎌倉期における荘園制の推移について、総合的な見地から評価する手がかりを得たい。
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Causes of Carryover |
2021年度の大部分にわたって新型コロナウィルスの感染状況が改善せず、2021年の間は出張を実施する条件自体が整わなかった。 さらに、研究分担者の所属機関が所在する自治体では、2022年2~3月に新型コロナウィルスの感染状況が悪化したため、研究分担者が出張に参加できない状況が生じた。そのため、2022年3月に実施した長崎市での出張では、研究代表者のみが出張(現地調査)を実施することになり、出張旅費や現地での諸経費をふくむ出張計画自体を縮小した。以上の理由によって次年度使用額が生じた。 長崎市(同市福田地域〈中世肥前国彼杵荘福田村故地〉)での現地調査は2022年度以降、継続実施する方針であるので、次年度使用額は、まず長崎市における研究代表者・研究分担者の共同による当該地域での調査経費に使用する予定である。 また、他の現地調査候補地での予備調査は2022年度に実施を予定しており、現地調査・事例収集の結果を整理・検討する研究会の開催も検討している。これらの旅費等に使用することを視野に入れている。
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Research Products
(1 results)