2022 Fiscal Year Research-status Report
中世荘園成立における女院領形成の先駆的役割―待賢門院を中心に―
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21K00855
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Research Institution | Maebashi Kyoai Gakuen College |
Principal Investigator |
野口 華世 共愛学園前橋国際大学, 国際社会学部, 教授 (40634647)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 待賢門院 / 待賢門院領 / 遠江国質侶荘 / 越前国河和田荘 / 上野国淵名荘 / 中世荘園成立史 / 中世荘園 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度の研究として、前年度に引き続き、「待賢門院発給文書一覧」と「待賢門院領一覧」の作成と、これらの一覧をふまえて「待賢門院史料集」の作成に着手した。また待賢門院院司と待賢門院領形成に関わった人々の抽出に取りかかった。 地域社会における現地調査の実施については、本年度予定していた遠江国質侶荘と、前年度の追加調査として越前国河和田荘の調査を実施できた。ただし越前国河和田荘の現地調査の初日に集中豪雨で電車が止まり、予定していた4人のメンバー中2人は結果的に福井に来られず、1人も1日半到着が遅れた。研究代表者はすでに現地入りしており、2人で日程を大幅に縮小しての調査となってしまった。 また本年度も新型コロナウィルス感染症の影響を受け、人数を集めての現地調査の実施が難しかった。遠江国質侶荘の現地調査は実施できたものの、最少人数での実施で予備調査的なものに留まっている。ただし当地では1000分の1の地図や書籍類を購入することができた。これは今後の調査にとって有益なものである。一方、周防国玉祖荘の現地調査は計画したものの、新型コロナウィルス感染症のため中止せざるをえなかった。その他、女院領のケーススタディとして下野国足利荘の踏査を実施した。 それでも、本年度の現地調査による大きな成果は、遠江国質侶荘の近隣荘園として王家領である宝荘厳院領初倉荘の存在がわかったことである。前年度の調査においても上野国淵名荘は隣荘である新田荘との関わりが深いことを見出したが、質侶荘においても同様のことが言える見通しがついた。今後はその他の待賢門院領で、どれほど同じようなケースがあるのかを検討する必要があるが、大事な知見だと考えている。そして、この知見は、1つの荘園だけを見ていても、逆にある女院領だけを全国的に抽出しても見出せないものであり、本研究ならではの成果といえよう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度の「待賢門院発給文書一覧」と「待賢門院領一覧」の作成と、これらの一覧をふまえての「待賢門院史料集」の作成、そこからの待賢門院院司と待賢門院領形成に関わった人々の抽出については、おおむね順調と言える。しかし、地域社会における現地調査の実施に関しては、当年度も新型コロナウィルス感染症の影響を大きく受け、人を集めての調査実施が難しかったことに加え、計画した調査の1つは中止することとなってしまった。また、実施した調査の1つは、集中豪雨の影響を受け、大幅に人数と日程を縮小しての調査となってしまった。以上のように現地調査において感染症と天災の影響を受けたためである。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、前年度に引き続き「待賢門院発給文書一覧」と「待賢門院領一覧」をふまえて「待賢門院史料集」を完成させ、その内容を検討する。「待賢門院領一覧」から、立荘に関わった人々と待賢門院に人的に奉仕した人々と重なるメンバーの抽出とその検証を実施し「待賢門院院司・立荘関係者データ」としてまとめる。 地域社会での現地調査に関しては、前年度できなかった周防国玉祖社の調査をまずは実施する。また前年度までに残した現地調査も合わせて実施する。 以上の本年度の研究を推進するにあたり、先の研究実績の概要でも述べたように、新たな知見を得たため、荘園形成に携わった人々については、さらに広範囲で検討する必要が生じ、また現地調査においても近隣荘園との関係という点に注目して調査する必要がでてきた。そのため、今後の現地調査における注力点や、立荘に関わった人々の抽出においては、効率を考え実施方法を再検討したうえで行なう必要がある。また最終年度であるため、遅れている分はさらに研究者の協力を得て推進する。
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Causes of Carryover |
2022年度は新型コロナウィルス感染症の影響と集中豪雨の直撃を受けたことにより、予定していた研究・調査が全て遂行できず、現地調査そのものの中止や短縮実施などを余儀なくされた。また前年度に引き続き、感染症の影響で作業人員の確保も難しかった。以上が大きな理由である。 2023年度の使用計画としては、待賢門院に人的に奉仕した人々と、待賢門院領の立荘に関わった人々について検証し、「待賢門院院司・立荘関係者データ」をまとめるため、専門知識の提供を含め、作業人員を増やす予定である。以上を人権費として使用する。また前年度中止した周防国玉祖社の現地調査や、1~2年目でやり残した現地調査を実施するために旅費を使用する。前年度までの研究で得た知見から現地調査の注力点を再考すべきであるため、それぞれの調査に適切な人員と専門知識の提供の依頼について再検討し、効率よく調査を実施できるように工夫する。また現地調査や「待賢門院院司・立荘関係者データ」をまとめるために必要な専門書・自治体史・現地刊行書籍・地図などを物品費で購入する。最終年度であるため、「待賢門院発給文書一覧」「待賢門院領一覧」「待賢門院史料集」「待賢門院院司・立荘関係者データ」、現地調査の結果などを含めた研究結果報告書を作成する予定である。
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