2021 Fiscal Year Research-status Report
Basic research on "Seki-Hitsu-Monjo" (documents written in pencil) in the early modern period of Japan
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21K00872
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岩崎 義則 九州大学, 人文科学研究院, 准教授 (60294849)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 松浦熈 / 松浦清(静山) / 石筆 / 平戸藩楽歳堂文庫 / 松浦史料博物館 / 長崎歴史文化博物館 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は,研究計画にもとづき,松浦史料博物館・長崎歴史文化博物館等において,松浦清・熈が利用した石筆の現物発見にむけた調査を実施。また,石筆文書とその関連史料の調査研究を実施した。結果,石筆現物の発見には至らなかった。しかし,合計約30通におよぶ石筆文書を発見・調査できた。研究成果として,2つの国際学会(シンポジウム)での報告を実施。さらに,松浦清の収集文物研究として,平戸藩楽歳堂文庫に関する論文を翻訳し,英文雑誌へと投稿した。具体的な実績は以下の通り。 1)Iwasaki Yoshinori Translation by Kazuhiro Murayama "Book Collecting by a Literati Daimyo in Early Modern Japan, and the Exchange of Information: An Investigation into Catalogues of the Rakusaido; Collection in Hirado Domain" Journal of Asian Humanities at Kyushu University, Vol.7, spring 2022に掲載予定。2)岩崎義則(単独)「平戸藩主松浦熈の石筆文書について」・「越境する文化:モノ、ひと、思想の軌跡と交流」・九州大学広人文学・アジアオセアニア研究機構・2022年2月13日報告。 3)岩崎義則(単独)「Reconstruction of clan identities at the end of the Edo period -The Case of MatsuraHiromu松浦熈, Lord of HiradoClan.」・プラットフォームとしての島-持続可能な社会を目指すための学際的検討-」・九州大学人社系教育研究コモンズ・2022年3月10日登壇。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
松浦史料博物館の調査において,茶湯関係文書などを収めていた木箱の中から,松浦熈の石筆文書5点,さらに,同館所蔵の蒲生家文書の中から2点の計7点を新たに発見・調査することができた。また,佐世保市立博物館の展示物から,松浦家の筆記具を調査することができた。さらに,長崎歴史文化博物館が所蔵する平戸藩関係資料のうち,城下町人(吉村家)の関係文書の中から,23点におよぶ石筆文書を発見・調査した。吉村家の石筆文書は,予見以上の点数が伝存しており,画期的な研究成果になることが予想される。 また,発見した石筆文書をもとに,1回の国際シンポジウムでの報告を行うこともできた。さらに,松浦熈に関する国際シンポジウムでの報告,松浦清と平戸藩楽歳堂文庫に関する1本の英文雑誌(翻訳)への寄稿も完了しており,研究計画は概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度において発見した石筆文書とその関連史料についての調査を継続。また,石筆の現物,およびその入手・受容に関する調査と研究を行う。 1 石筆文書の調査と研究 ①長崎歴史文化博物館所蔵・吉村家文書の調査と研究。文書全体の整理と調査を2022年度中に完成し,データベースを作成・公開する。②松浦清・熙が利用した石筆の現物発見にむけた再調査。③松浦史料博物館所蔵・蒲生家文書などの調査と研究。④佐世保市所蔵・西口松浦家文書(石筆文書を確認済)についての調査と研究。 2 石筆の入手過程の研究 ①長崎歴史文化博物・長崎シーボルト記念館・大村史料館等が所蔵する長崎貿易関係資料の調査。オランダからの輸入鉛筆に関する記録の有無を確認・調査。②松浦史料博物館所蔵「御家世伝」などの記録類を調査。石筆の入手に関する記録を調査。 3 石筆の受容に関する研究 ①イエズス会等キリスト教宣教師資料の調査。鉛筆の舶来に関する記録を確認・調査。②日本文具資料館・仙台市立博物館などにおいて,石筆(鉛筆)の現物調査。清・熙が使った石筆の形状・形態を推測するための資料を得る。③松浦家以外の文人大名の石筆受容の有無を確認・調査。毛利高標・佐竹義厚など。 4 予定している研究成果 ①吉村家文書を中心とした石筆文書に関する研究成果(投稿論文1本)②松浦熙関係史料の調査にもとづく研究成果(投稿論文1本)③吉村家文書のデータベースの作成と公開 以上を2022年度中の研究成果とする。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症対策のため,史料調査予定の博物館・図書館における調査が十分できなかった。さらに,2022年2月に入り,ようやく,松浦史料博物館・長崎歴史文化博物館での調査が可能となる見込みがたった。その上で,松浦史料博物館と佐世保市図書館・佐世保市立博物館については,3月下旬に調査を行ったことから,精算払のため,計画的な予算執行ができなかった。また,上記の理由により,2021年度は,古文書,特に石筆文書の調査研究に必須な観測機材(単眼拡大鏡・LEDライト)・撮影機材(デジタル一眼レフカメラ・マクロレンズ・広角レンズなど)の調達を行った。
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Research Products
(3 results)