2023 Fiscal Year Annual Research Report
中世社会における製鉄・鍛冶職能集団の活動実態の解明と中世製鉄技術に関する研究
Project/Area Number |
21K00882
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Research Institution | Hijiyama University |
Principal Investigator |
安間 拓巳 比治山大学, 現代文化学部, 教授 (40263644)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 中世製鉄遺跡 / 製鉄職能集団 / 荘園公領制 / 鉄素材の流通 |
Outline of Annual Research Achievements |
製鉄遺跡の発掘調査と中世鉄生産に関わる文献調査を実施した。製鉄遺跡の調査は昨年度までに検出していた製鉄炉地下構造の細部や周辺部についての確認調査、出土鉄滓や鉄塊の分析調査、検出遺構の実測作業を実施した。製鉄炉地下構造の北端部では本床状遺構や小舟状遺構の閉塞状況を確認した。この部分では大型の粘土塊などを積み重ねるようにして端部を閉塞するというこれまでに知られていなかった状況が明らかになり、製鉄炉地下構造の新たな構築方法を確認することができた。周辺部の調査では、製鉄炉地下構造の東側(山側)高まりの背後(山側)から大型土坑を検出した。このため、本遺跡は安芸地方に一般的に見られるものと共通の原理で製鉄作業場が構築されていることが明らかとなった。製鉄炉地下構造の北側で検出されていた木炭層は、年代測定の結果製鉄炉地下構造と同時期のものと確認された。そのため製鉄作業に伴う木炭置き場とも考えられたが、木炭層の下面に軽く焼けしまった面が広がっていることから何らかの遺構、例えば炭窯の一部である可能性が高いと判断している。仮に炭窯であれば、安芸地域の製鉄遺跡では山側に向かって製鉄炉地下構造の右側に炭窯跡が見つかることが多く、本遺跡のように左側に炭窯が見つかることは珍しい。調査範囲や調査期間の関係で全体を検出することはできなかったが、遺跡全体の構造を考える上で重要な知見を得ることができた。鉄滓や鉄塊の化学分析では操業状況を推定するデータを得ることができた。とくに鉄滓に含まれる鉄分や鉄塊は高炭素鋼~鋳鉄であるとの分析結果が得られ、本遺跡では銑鉄生産が行われていた可能性が高いことが明らかとなり、当時の操業状況を知る重要な知見を得ることができた。 文献調査では中世荘園における鉄生産の様相や生産された鉄素材の流通について考察を深めることができた。
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Research Products
(1 results)