2021 Fiscal Year Research-status Report
Quantitative Study on Household Budget in Early China
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21K00913
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
柿沼 陽平 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (70633311)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 秦漢時代 / 家計 / 経済史 / 貨幣史 / 物価 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、中国古代の民間家計関連史料を収集・整理し、数量的に分析するという研究目的達成のため、以下の4方面にわたって研究を展開した。 第一に、基本資料を買いそろえ、アルバイト人員を雇用して『史記』平準書関連文献のパソコン入力作業を進め、その解読をおこなった。ほぼ7割の資料収集を終え、3割の整理・入力作業を完了した。現在はそれに対して、申請者自身の出土文字資料研究をふまえた付注作業をつづけている。本資料訳注は次年度出版予定である。本訳注が完成すれば、中国古代家計経済史研究の基礎が確立されることになる。 第二に、走馬楼呉簡所見の後漢末~三国時代の戸籍類・財産関連の記載に注目し、その統計をとった。結果、吉陽里・宜陽里という二つの「里」レベルに所属する人びとの個人情報を整理し、「里」が所謂共同体ではなく、戸籍上の行政区分にすぎないことを明らかにし、むしろ当時の民は季節ごと・年度ごとに複数の「丘」(自然聚落)のあいだで移住を繰り返していたことを論じた。これは、論文「三国時代における孫呉の郷里社会――荊州長沙郡臨湘侯国の小武陵郷吉陽里と南郷宜陽里を例に――」として、目下学術雑誌に投稿中である。本論文は、中国古代の「家計」をさぐるうえで、まず「家」のかたちと、個々の「家」の生活状況を明示するものであり、本研究の基礎となる。 第三に、秦漢時代の物価史研究の一部をまとめ、一般書『古代中国の24時間』(中央公論新社、2021年)に掲載した。 第四に、中国古代家計経済史研究をすすめるうえで、魏晋時代の西域経済にも改めて検討を加える必要が生じたため、学会報告「中央アジア出土の中国式コイン」2021年度シルクロード学研究会(2022年1月22日、於オンライン)をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『史記』平準書の訳注作成に際して、研究計画では古今東西すべての『史記』関連注釈をふまえたものを作成予定であった。しかしコロナ下で各地の図書館におもむくことがむずかしく、またいくつかの図書館や文庫は人員受入れを制約しているため、入力作業がやや遅延している。また中国に調査へ行くこともできていない。その一方で、従来未公表の『史記』平準書注釈書版本が中国でいくつか公開され、それを入手できたため、現地に行かずとも入力作業を進められた部分もあり、全体としてはおおむね予定通り研究がすすんでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、『史記』平準書の訳注書を刊行する(汲古書院)。 第二に、嶽麓書院蔵秦簡「為獄等状四種」の訳注書を刊行する(汲古書院)。ただし当該篇全体を私単独で翻訳する必要はなく、その余力もないので、現在グループ研究の形で研究を進めている。家計史に関わる部分は私が担当し、かつ書籍全体の編者も私となる予定である。 第三に、物価資料の集成を準備する。
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Research Products
(2 results)