2023 Fiscal Year Research-status Report
ローマ帝国時代におけるヘレニズム的世界認識の継承と変容の研究
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21K00924
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
南雲 泰輔 山口大学, 人文学部, 准教授 (70735901)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ローマ帝国 / ローマ地理学 / 西洋古代地理学史 / ポンポニウス・メラ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、ローマ帝国時代における世界認識の形成過程とその特質を明らかにすることを目的とするものであり、全体で5年間の研究期間のうち第2年度目から第4年度目を、ポンポニウス・メラ著『地誌(De chorographia)』の原典テキストを1年に1巻づつ読解し、内容の検討を行なう期間として計画していた。しかし、本年度は、2023年度広島史学研究会大会シンポジウム「「世界」を構想/叙述する」(2023年10月28日、於広島大学東広島キャンパス)という本研究課題にとって意義深いテーマの報告依頼を受けたため、研究実施計画のうち作業順序について一部変更を行ない、メラ著『地誌』におけるギリシア・ヘレニズム地理学の継承と変容、ローマ地理学の形成過程にかんする考察を前倒しして実施することとした。同シンポジウムでは、「ローマ帝政前期における「世界」の叙述とその特質:ポンポニウス・メラ著『地誌』の構想について」と題して口頭で研究発表を行ない、この口頭発表に基づく同一タイトルの研究論文を学術雑誌に寄稿した(『史学研究』318号、2024年6月刊行予定)。これによって、メラ著『地誌』の「ローマ地理学」としての歴史的特質を明瞭にすることができた。このように、史料の性格について一定の見通しを獲得することができたことは、訳読作業に際しての方針を確定させるうえで極めて有意義であったと考えている。このほか、本年度は、古代ローマ社会における死・汚穢・郊外を扱った近年の重要研究文献を取り上げた書評を『西洋古代史研究』第23号(2023年12月刊行)に発表し、また、410年のローマ市劫略にかんする研究報告を第21回日本ビザンツ学会大会 (2024年3月29日、於岡山大学津島キャンパス)において口頭で発表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、当初の研究実施計画の作業順序を一部変更し、ポンポニウス・メラ著『地誌』におけるギリシア・ヘレニズム地理学の継承と変容、ローマ地理学の形成過程についての考察を先に実施した。それゆえ、口頭報告の準備および論文の執筆作業のため、現在、メラ著『地誌』の翻訳・注解を作成する作業は後ろ倒しとなっている。訳読の作業そのものは遅れているが、メラ著『地誌』の史料的性格や歴史的特質についての分析・考察を先に行なったことによって、翻訳・註解を行なうにあたっての方向性を明瞭に認識しえたことは重要な成果であり、今後の作業のために必要かつ意味のある計画変更であったと考えている。そのため、研究実施計画全体の進捗状況としては、「やや遅れている」と判断したい。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点での進捗状況はやや遅れているが、本年度に遂行した研究を通じて、史料訳読上の方針を確定させることができたので、今後の推進方策としては、これまでの研究で得られた知見に立脚しつつ、可能な限り当初計画に沿って着実に翻訳・注解の作業を進め、所期の目的の達成に務めることとしたい。なお、本年度の研究を遂行するなかで、メラ著『地誌』の既存の諸近代語訳にはいくつかの問題点があることも認識することができた。翻訳・註解の作成時には、こうした点にも留意して作業を進めたい。
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Research Products
(5 results)