2021 Fiscal Year Research-status Report
光明皇后の造営事業からみた奈良時代造瓦・供給体制の研究
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21K00951
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
次山 淳 富山大学, 学術研究部人文科学系, 教授 (80260058)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 光明皇后 / 造営事業 / 造瓦 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、奈良時代の平城京周辺でおこなわれた造営事業を、歴史考古学の方法を通じて構造的に捉えていくための視点として、光明皇后(701~760)により行われた造営事業を取り上げ、考古資料である造瓦を中心に整理・検討していくことを目的としている。 光明皇后あるいはその家政機関である皇后宮職の関与が指摘されている造営事業の対象地は、平城京を中心に分布するが、地理的な位置と所用瓦のありかたから整理すると、A:藤原不比等邸宅地、平城京皇后宮、法隆寺東院、恭仁京皇后宮、法華寺、B:興福寺五重塔、興福寺西金堂、新薬師寺、C:東大寺上院地区、東大寺、の3グループに分けることができる。基礎的な作業としては、個々の造営事業とそれにともなう造瓦に関する史・資料および先行研究を整理し、所用瓦の系統性から各グループ内での事業相互のありかた、そしてグループ間のありかたを時間的・空間的に確認していくことになる。 令和3年度は、Aグループにあたる藤原不比等邸宅地、平城京皇后宮、恭仁京皇后宮、法華寺、および法隆寺東院の造営事業に関する①文献史、仏教史、建築史、美術史の史資料・先行研究の収集と検討、②各遺跡および関連する瓦窯出土瓦に関する資料・先行研究の収集と検討、課題の抽出、および研究課題全般にわたる先行研究の収集・検討をおこなった。①・②の作業によって、Aグループにおける藤原不比等邸宅地所用軒瓦である平城宮軒瓦型式6285A-6667Aから、法隆寺東院(および恭仁宮・平城宮)所用軒瓦である6285B-6691Aへの連続的な型式組列を整理するとともに、文献史料による先行研究から、その交替点にあたる法隆寺東院の造営が遅くとも天平9年(737)には開始されていたであろうことを認め、系統的な組列の時間的定点を確認した。また、検証課題を抽出し、これらの作業を『富山大学人文学部紀要』に研究ノートとして公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、対象とする造営事業について時間を追って区分したかたちで、3ヶ年の研究計画を立てたが、概要に記したようにやや検討遺跡の構成を変更し、造瓦の系統性を重視した3グループを視点に検討を進めることとした。このため個別遺跡の対象年度に若干の異同は生じたが、年間の作業としては、Aグループという1系列について先行研究と論点を整理することができたため、ほぼ順調に進行しているといえる。 ただし、新型コロナウィルスの感染状況から、実地調査が十分に実施できない状況にあったため、文献資料調査による検討と考古資料の実地調査という本研究の2本の柱のうち、後者は充足できなかった。このため、令和3年度は文献資料調査に重点をおき、研究計画の対象を先行させるかたちで作業を進めた。また、軒瓦の観察記述など考古学的な文献調査については、令和4年度以降に効率的な実地調査がおこない得るための準備作業と位置づけ、調査課題の抽出などを重点に作業を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、BおよびCグループの興福寺五重塔、興福寺西金堂、新薬師寺、および東大寺上院地区、東大寺の造営事業について、文献史、仏教史、建築史、美術史に関する資料・先行研究の収集と検討、各遺跡および関連する瓦窯出土瓦に関する資料・先行研究の収集と検討、課題の抽出をおこなう。考古資料の実地調査については、新型コロナウィルスの感染状況を配慮したうえで、令和3年度に十分に実施できなかった調査も含めて、効率的な実施をはかる。 また、令和3年度に収集検討した史資料を整理し、各グループ内の関係性に加えて、グループ間の相互関係の検討をおこなう。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染状況に対する所属大学の方針に従い、遠隔地への移動を差し控えたため、近畿各府県における実地調査、研究発表等の実施がおこなえず、予定していた旅費分が次年度使用となった。 令和4年度は、新型コロナウィルス感染状況を適切に判断したうえで、実地調査を実施する予定である。
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Research Products
(2 results)