2021 Fiscal Year Research-status Report
The settlement process of Homo sapiens in the Japanese archipelago from the viewpoint of Oki Islands' obsidian sources exploitation behavior.
Project/Area Number |
21K00958
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
及川 穣 中央大学, 人文科学研究所, 客員研究員 (10409435)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 黒曜石 / 黒耀石 / 後期旧石器時代 / 台形様石器 / 中国山地 / 隠岐諸島 / 現代人的行動 / 海上渡航 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本列島やアジア海域に初到達した現生人類は、どの様に新天地への適応を果たし定着に成功したのか、その文化的特性は何か。いかなる社会的関係を築いてそれを成し遂げたのか。この問いに応えるため、海上渡航と往還を果たした具体的な証拠として、5~3万年前に島嶼環境であった隠岐黒曜石原産地を位置づける。ある土地への定着の過程は、その土地の資源、すなわち石器石材資源の開発の結果として各遺跡に残された石器群の内容に表れるため、道具の製作・運用構造から具体的に明らかにする。本研究では、山陰~中国山地を対象とし、島嶼環境の黒曜石原産地の開発状況と利用した先である消費地遺跡での分布状況とを総合的に理解し、人類の資源開発行動モデルを構築する。課題達成のため、3つのサブテーマを明らかにする。 令和3年度は、サブテーマA「黒曜石原産地の開発、獲得状況の解明」では、島根県西ノ島町美田小向遺跡石器群の分析数値について整理し、まとめた。サブテーマB「消費地遺跡での黒曜石利用状況の解明」では、各遺跡石器群の分析数値について整理し、ほぼ成果をまとめた(7遺跡分)。また、基準となる4遺跡の年代値取得のため、放射性炭素年代測定分析を実施した。成果として、石器群に確実に伴った炭化物の年代として約36000-34000年前という値を得た。近畿・中国・四国地域における最古の年代値となった。また炭化材の樹種同定結果からは、約28000年前を境に比較的温暖な気候から寒冷な気候(最終氷期最寒冷期)への変化の可能性を捉えることができ、当該時期の気候、植生の復元など古環境の復元に寄与する結果を得ることができた。 また消費地遺跡の事例分析として、真庭市地蔵ヶ淵洞穴遺跡の発掘調査を実施し、黒曜石製石器を含む出土遺物を回収することができた。動物骨、化石人骨も回収したため、年代測定や同位体分析など各種理化学的分析を実施している最中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延防止の観点から、予定していた活動ができず、次の2件について課題を残した。 サブテーマA:「黒曜石原産地の開発、獲得状況の解明」のうち、黒曜石獲得状況の分析について、分析成果を学術雑誌に投稿すべく準備したが、遺跡出土石器群の法量計測の計測値の集計に課題が生じており(予定していた学生への謝金によるデータ入力依頼ができなかった)、未完成となった。次年度に実施し、完了する予定である。 サブテーマB:「消費地遺跡での黒曜石利用状況の解明」のうち、各遺跡の石器群の法量分析や蛍光X線分析などに若干の課題を残してしまった。次年度に資料調査を実施し、予定していた全ての遺跡の分析を実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、まず新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響によって未達成となった下記の項目を優先して実施していく。 サブテーマA:「黒曜石原産地の開発、獲得状況の解明」のうち、黒曜石獲得状況の分析について、分析成果を学術雑誌に投稿するため、遺跡出土石器群の法量計測の計測値の集計・入力。サブテーマB:「消費地遺跡での黒曜石利用状況の解明」のうち、各遺跡の石器群の法量分析のための資料調査。 次に、当初の予定通り、次の3つのサブテーマを進める。A:黒曜石原産地の開発、獲得状況の解明(原産地遺跡出土石器群の製作技術と製作工程を復元し、人類の具体的な活動内容として開発の様相を明らかにする),B:消費地での黒曜石利用状況の解明(①各遺跡の道具製作・運用構造を分析するため、石器群の製作技術分析を実施する。②年代や産地解析など理化学的分析によって具体的な海上往還渡航の証拠を科学的に整理し、黒曜石利用の起源を道具製作・運用構造上に位置づける。),C:黒曜石の獲得者の特定と行動モデル構築(原産地からの運搬場所としての特徴を抽出・類型化)。 具体的には、B -②の推進のため、岡山県真庭市所在遺跡(城山東遺跡・小林河原遺跡)の調査によって炭化材をサンプリングし、各種理化学的分析を実施する予定である。そして、最終年度にむけて、Cの行動モデル構築のため、各遺跡の分析成果を総合し、原産地からの運搬場所としての特徴を抽出・類型化する。 また、これら成果を査読付き学術雑誌や国際誌へ投稿するため執筆していく。 さらに、今後も新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延防止に伴って当初の予定通り研究推進ができない場合は、研究成果の普及のための活動(成果報告書の印刷・刊行等)などに力点を置くよう柔軟に推進方策を熟考していきたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延防止の観点から、当初予定していた下記の活動ができず、課題を残し消耗品ならびに旅費など次年度使用額が生じた。 サブテーマA:「黒曜石原産地の開発、獲得状況の解明」のうち、黒曜石獲得状況の分析について、分析成果を学術雑誌に投稿すべく準備したが、遺跡出土石器群の法量計測の計測値の集計に課題が生じており(予定していた学生への謝金によるデータ入力依頼ができなかった)、未完成となった。次年度に実施し、完了する予定である。サブテーマB:「消費地遺跡での黒曜石利用状況の解明」のうち、各遺跡の石器群の法量分析や蛍光X線分析などに若干の課題を残してしまった(各資料所蔵先への訪問を自粛したため)。次年度に資料調査を実施し、予定していた全ての遺跡の分析を実施する予定である。 また、当初予定していた国際学会等での成果発表も自粛したため、旅費など次年度使用額が生じた。 今後の使用計画においては、上記課題に優先して取り組み、当初予定の研究進捗に戻すため使用する。また今後も新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延防止等への対応のため、資料調査などに支障をきたす場合は研究成果を広く普及させる活動(成果報告書の印刷・刊行等)や成果の公開促進のための活動等の費用に替えることも検討していく。
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Research Products
(5 results)