2021 Fiscal Year Research-status Report
Basic research on food resource investigation in the Paleolithic Age
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21K00961
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Research Institution | Minobusan University |
Principal Investigator |
保坂 康夫 身延山大学, 仏教学部, 講師 (50810785)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
庄田 慎矢 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 企画調整部, 室長 (50566940)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 被熱礫残存脂質分析 / 被熱礫使用履歴分析 / 分析礫群関連データ収集 / 残存脂質質量分析計 / 電気炉 / 被熱礫使用履歴指標 / 残存資質の抽出に成功 |
Outline of Annual Research Achievements |
(被熱礫残存脂質分析)残存脂質分析のための被熱礫の借り受け作業を実施した。北海道で4遺跡27点、東京都で1遺跡33点、鹿児島県で3遺跡35点、合計95点を借り受けた。借り受けた被熱礫は、3Dスキャナーによって3D画像を作成し、切断作業前の旧状を記録保存した。また、岩種の同定作業を裸眼観察によって実施した。その後、研究分担者庄田の研究室に輸送し、分析部分の切断作業を行った。切断片を粉砕し、北海道の被熱礫23点について残存脂質質量分析計による分析を実施し、すべての資料から残存資質の抽出に成功した。 (被熱礫使用履歴分析)残存資質分析の被熱礫借り受け作業と同時に、分析対象遺跡周辺の河川から分析礫と同じ岩種の礫を採取した。北海道で3河川4岩種、東京都で1河川2岩種、鹿児島で2河川3岩種、それぞれ予備も含めて15点ずつ合計135点を採取した。実験礫を電気炉によって30分で800℃まで加熱した。炉内で約1割の礫が割れたが、割れなかった礫について、1岩種につき3種類の実験を実施した。3点を水浸け(ストーンボイリング法を想定)、3点を片面急冷却(グリル調理を想定)、3点を全面急冷却保温(石蒸し焼き調理を想定)の3種の実験メニューである。2021年度は北海道3河川4岩種の48点について実験を実施した。実験の割れ礫の属性観察を行い、2023年度に実施する実資料との対比のための被熱礫使用履歴指標の確認作業を実施した。 (分析礫群関連データ収集)各地の研究協力者に対し、分析対象礫群に関する既存データの収集(報告書や保管資料を参照したデータ収集)と礫群構成礫の属性データ収集作業を依頼した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(被熱礫残存脂質分析)予定した残存脂質分析のための被熱礫の借り受け作業はすべて完了した。なお、北海道の柏台1遺跡については、分析資料を借り受けてきたものの分析に耐えうる大きさが確保できないため(遺跡自体に分析に十分な大きさの礫がほとんど存在していない)分析を断念したが、その分を他の遺跡の分析数に分配した。また、被熱礫炭化付着物炭素・窒素安定同位体分析を予定していたが、今回、対象とした遺跡の礫群被熱礫に付着する黒色付着物から分析に必要な十分な分析資料が確保できないことが判明したため、分析法を再検討することとした。北海道の遺跡について残存脂質分析を進め、分析礫すべての残存脂質の抽出に成功した。 (被熱礫使用履歴分析)電気炉実験で使用する礫をすべて確保した。2021年度は約4割の礫の実験に着手し、このうち3/4の礫について実験を終了した。実験礫を観察し、被熱礫使用履歴分析に必要な指標の抽出作業を進めた。 (分析礫群関連データ収集)分析対象礫群に関する既存データの収集については、礫群構成礫の属性データ収集作業を進行させた。
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Strategy for Future Research Activity |
(被熱礫残存脂質分析)東京都の1遺跡、鹿児島県の3遺跡について、借用した被熱礫の切断片を粉砕し、ガスクロマトグラフ質量分析計による分析を進め、残存脂質の抽出と生物指標の同定作業を進める。また、2021年度分析資料も含め、抽出した残存脂質の中から特に状態の良いものを選別しイギリスのヨーク大学に持ち込んでガスクロマトグラフ同位体比質量分析計での安定炭素同位体比の測定作業を実施する。 (被熱礫使用履歴分析)電気炉実験を継続し、残りの約6割の礫の実験に着手し、2021年度から継続中の実験礫も含め実験をほぼ終了させる。実験礫を観察し、被熱礫使用履歴分析に必要な指標の抽出作業を進め、指標を客観的に認識できる有効な方法も模索する。 (分析礫群関連データ収集)各地の研究協力者に依頼して、分析対象礫群の構成礫属性データの収集作業を継続する。
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