2023 Fiscal Year Annual Research Report
Basic research on food resource investigation in the Paleolithic Age
Project/Area Number |
21K00961
|
Research Institution | Minobusan University |
Principal Investigator |
保坂 康夫 身延山大学, 仏教学部, 講師 (50810785)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
庄田 慎矢 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 企画調整部, 室長 (50566940)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 残存脂質抽出 / ガスクロマトグラフ質量分析計 / 炭素同位体分析 / 被熱礫使用履歴分析 / 電気炉実験 / 被熱礫割れ線分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本列島の旧石器時代の食料資源究明のため、調理施設である礫群の調理対象と調理法を探求し、①被熱礫残存脂質分析と②被熱礫使用履歴分析を実施した。 ①では、最終年度のイギリスのヨーク大学での個別脂肪酸安定炭素同位体比分析を継続した。全体の成果として、1)東アジアで初めて旧石器時代の礫群に残存脂質分析を試みた、2)残存脂質の抽出と同定に成功した、3)加熱を示す指標化合物を抽出し、礫が加熱調理に使用された蓋然性が高まった、4)安定炭素同位体比に明らかな地域差が見られ、地域よって調理対象が異なっていた可能性が示された、5)特に北海道地域では、旧石器時代に海洋資源利用の可能性が示唆された。 ②では、実験礫と群構成礫とに対して割れ線分析を実施した。Neubauerの研究(Fernanda Neubauer,Use-alteration analysis of fire-cracked rocks ,American Antiquity 83(4), 2018)を指標としたが、焼成実験の結果、Neubauerの破壊パターンの違いは、感覚的な判断では限界があった。そこで、割れ線のギザギザ度を数値化して客観的に判断する方法を検討し、モルフォロジー変換を採用して以下の成果を得た。1)割れ線が複雑であれば、熱衝撃(急激な温度変化による破壊)の可能性が高い。2)北海道、鹿児島の砂岩礫については熱衝撃によって割れた礫が存在している可能性が高い。全体の成果として、旧石器時代の礫群の調理方法として、1)北海道ではストーンボイリング法の可能性が指摘できた。2)東京都ではストーンボイリング法の可能性は低いと指摘できた。3)鹿児島県では、ストーンボイリング法の可能性は低く、焼石グリル法や石蒸焼き調理法の可能性が高いと評価できたが、一部の礫群で水を注入する行為を含む石蒸焼き調理法である可能性を指摘した。
|