2021 Fiscal Year Research-status Report
朝鮮半島三国時代の古墳出土玉類に関する研究-5世紀の日朝関係の問題を視野に-
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21K00962
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
井上 主税 関西大学, 文学部, 教授 (80470285)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 渡来系玉類 / 新羅 / 加耶 / 日朝関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、朝鮮半島三国時代の古墳から出土した玉類を対象に、考古学の最新の視点・方法によりその全体像がわかるよう体系化し、朝鮮半島三国時代の玉類の実態解明、さらに日本国内の渡来系玉類との比較検討を通じて、5世紀における日朝関係の変化やその実態とはどのようなものかといった学術的課題に取り組み、5世紀における日朝関係の特質の一端を明らかにすることを目的とする。 初年度である本年度は、次年度以降の国内出土の渡来系玉類との比較検討のため、朝鮮半島三国時代の玉類の分析を行なった。なかでも、現在の慶尚道に位置していた加耶諸国および新羅の古墳から出土した玉類を対象とした。 既存資料については、加耶諸国および新羅の地域別、および時期別にデータベース化を進めた。なかでも金官国や阿羅加耶の中心古墳群や周辺古墳群から出土した玉類について、その出土状況(着装状況も含む)や組合せを検討することができた。加耶諸国のなかで、副葬された玉類にどのような違いがみられるのか、またその違いが意味するところを将来的に検討する材料を得ることができた。 また、ヒスイ製勾玉に関しては、朝鮮半島における出現期の資料が、慶州地域に先行して金官国の金海地域や釜山地域でみられることが指摘でき、他の倭系遺物との関連性も認められる。このほか、新羅の古墳から出土した玉類については、5・6世紀の王陵を中心に副葬された金属製玉類を中心に、資料の整理および検討を進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は研究計画の初年度であるが、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、国外出張も難しい状況であったため、朝鮮半島三国時代の玉類に関して、新規資料の抽出および韓国における資料調査が実施できず、当初予定からの変更を余儀なくされた。 対策として、朝鮮半島三国時代の玉類のうち、既存資料については報告書や図録などをもとにデータベース化作業を前倒しして進めている。そのさいに、韓国発掘調査報告書データベースを活用して、同作業を進めた。 以上のように、年度計画のうち、朝鮮半島三国時代の古墳出土玉類のデータベース化を進めることはできたが、韓国における資料調査が実施できなかった点を考慮し、全体としては「やや遅れている」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、朝鮮半島三国時代の玉類のうち既存資料については、報告書や図録などをもとにデータベース化作業を進めていく。加耶諸国および新羅を対象に、地域別、時期別にデータベース化を進める。 当面の間は新型コロナウイルス感染症流行によって国外出張が難しい場合も想定し、その状況に柔軟に対応できるよう工夫しながら研究を推進していきたい。方策の一つとして、研究分担者に吉田東明氏(九州歴史資料館)を加えた。吉田氏の参画によって、国内、とくに九州地方の渡来系玉類の抽出作業を進めることができる。また、近畿地方出土の渡来系玉類の抽出作業も優先的に進めることで、将来的には国内の渡来系玉類の出土状況や組合せ等の比較検討を行うことも期待できる。 以上の作業を通じて、朝鮮半島三国時代の玉類の実態解明、さらに日本国内の渡来系玉類との比較検討を通じて、5世紀における日朝関係の変化やその実態について明らかにしていきたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の流行によって、予定していた韓国での資料調査が実施できなかったためである。 今年度は、韓国での資料調査の回数を増やすことも検討しているが、引き続き国外出張が難しい場合は、国内での資料調査を前倒しして実施することで対応する。
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Research Products
(3 results)