2023 Fiscal Year Annual Research Report
縄文土器の微視的観察から縄文時代における集団の移動・交流を探る
Project/Area Number |
21K00963
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Research Institution | Independent Administrative Institution National Institutes for Cultural Heritage Tokyo National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
千葉 毅 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存科学研究センター, 研究員 (70589845)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 縄文時代 / 縄文土器 / 色調 / 分光分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
縄文土器の素材粘土採取時における色調による選択性を検討するために、昨年度から継続して胎土の色調についての分析方法の検討、計測を進めた。従来、土器の色調記録は、肉眼による土色帖との照合が主な方法であった。また記録箇所も土器1点につき代表的と考えられる部分を数箇所記録するに留まることが多かった。しかし、土器器面の色調は一様ではなく代表点を選択する際の恣意性が生じてしまう。そこで本研究においては、明らかな付着物等を除く残存器面の面積に応じて測定箇所を増やし、その組み合わせ及び平均値によって対象土器の色調を表現する方法を試行している。色調の計測には小型分光測色計を使用することで再現性の向上を図る。これにより、より実態に近い土器色調の記録が可能となると考えられる。 今年度は、新潟県域における縄文時代中期中葉から後葉の土器群について色調測定を実施し、同時に実施された蛍光X線分析結果との照合を行った。これにより、わずかではあるが、遺跡立地及び分類による色調の傾向が見出せることを予察した。具体的には、Fe2O3と赤褐色の彩度の相関(Fe2O3が多いと濃い赤褐色)、わずかではあるがSiO2と明度・彩度との相関(SiO2が多いと、薄く、くすんだ色)が傾向として指摘できる。遺跡ごとでも色調の傾向が指摘できた。型式ごとのまとまりは、現状では積極的には指摘し得るほどの差はないように見えるが、資料数が少ないことによる制約の可能性もある。 本科研費での研究期間は今年度で最終年度となるが、同様の方法での調査分析は今後も継続して実施していく予定である。
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