2023 Fiscal Year Research-status Report
古墳時代後期から終末期における陶棺生産・消費システムの研究
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21K00964
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Research Institution | Kashihara Archaeological Institute , Nara prefecture |
Principal Investigator |
絹畠 歩 奈良県立橿原考古学研究所, 調査部調査課, 主任研究員 (50638103)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥山 誠義 奈良県立橿原考古学研究所, 企画学芸部資料課, 総括研究員 (90421916)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 古墳時代 / 古墳 / 棺 / 陶棺 / 彩色 / 生産・消費システム |
Outline of Annual Research Achievements |
3年目となる令和5年度は、陶棺の生産・消費システムに迫るため、さらなる調査・検討を行った。 陶棺の生産側の検討としては、陶棺生産窯の整理を行ったほか、これまで入手した画像をもとにSfMを利用した製作技術の検討を行った。前年度までに調査を行ってきた東国地域、四国地域の陶棺に加えて、新たに山陰地域の陶棺を対象として、検討を行った。東国地域では、畿内地域の土師系亀甲形陶棺の系譜関係の中で製作されるものの、独自の要素を加えて製作していることが浮き彫りとなった。東国地域・四国地域・山陰地域の陶棺の系譜関係とその背景については、学会発表を行ったほか、東国地域のうち福島県いわき市後田1号墳出土陶棺の系譜については、論文として成果を公表した。 さらに新たに行ったものとしてサイズの検討がある。近畿地域の陶棺は6世紀代から7世紀中葉にかけて、土師系・須恵系ともに全体的に小型化していく一方で、吉備地域の陶棺は7世紀代まで、大型のサイズが維持される傾向があることが明らかとなった。これらは、消費システムの検討とも関連し、背景として改葬を含む二次葬との関係を考察した。 消費システムの検討としては、これまで検討を行ってきた、陶棺の古墳への採用過程の検討を進めた。古墳データベースを更新したほか、特に群集墳の中で陶棺採用古墳の副葬品の帰属関係の検討を行った。 彩色顔料の検討として、借用していた山梨県出土の陶棺の分析を進めたほか、新たに大阪府和泉市出土の陶棺片を借用し、分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本来であれば3ヵ年で研究課題を終了する予定であったが、新型コロナウイルスによる移動制限などはなくなったものの、これまでの2ヵ年で直面した事態により、全体的に遅延が生じている。また、他の業務の多忙からも研究課題の遅延が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
1年間の延長申請を行い、研究成果を総括する作業を中心に行う。総括するにあたって、必要な陶棺の調査のための出張を必要最低限行う。また、これまで資料化した陶棺の製作技術の共通性の検討を行い、中心地域である近畿地域・吉備地域との比較を行うことで、他地域の陶棺の製作技術の共有性、独自性の発現頻度などを明らかにする。 消費システムの検討では、これまでに作成したデータベースから検討を行い、製作技術との関係を明らかにする。 彩色顔料の分析では、和泉市出土陶棺の検討を進め、これまで検討してきた資料の総合化を図る。 以上の検討を行うことで、研究課題の総括を行い、当初の目的である陶棺の社会的意義を明らかにし、陶棺が生産・消費される古墳時代後期から終末期の社会像に迫る。
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Causes of Carryover |
過去2ヵ年のコロナ禍による出張自粛、及び補助で雇用予定の学生が集まらなかったことに起因している。 次年度では、行くことができていない陶棺の検討のための出張を行い、旅費としての使用を行う。また、最終的な総括を行う上で必要な論文や書籍の購入費などの消耗品費、さらに補助者の採用の人件費などで使用する。
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