2023 Fiscal Year Research-status Report
Empirical research on the distribution of Bengala excavated from kofun in Kyushu
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21K00967
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Research Institution | Kyushu National Museum |
Principal Investigator |
志賀 智史 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館, 学芸部博物館科学課, 室長 (90416561)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ベンガラ / パイプ状粒子 / 螺旋状粒子 / 鉄細菌 / 鉄鉱石 / 阿蘇の褐鉄鉱 |
Outline of Annual Research Achievements |
3年度目の令和5年度は、東九州を中心に資料調査を実施した。 なかでも宮崎県での調査事例は興味深く、在地の墓制である地下式横穴墓においては鉄細菌由来のパイプ状の粒子を含むベンガラ(以下、P類)が、外来の墓制である古墳においては鉄鉱石由来の不定形粒子だけを含むベンガラ(以下、不定形類)が採用されるものが多いことが明らかとなった。このことから、P類は地域内での生産が想定される。不定形類は熊本県阿蘇の褐鉄鉱など鉄鉱石を素材に生産されたものと思われ、古墳造営に伴いもたらされた広域流通したベンガラであった可能性が考えられる。この墓制による採用ベンガラの差は、令和4年度に調査を行った鹿児島県の状況と一致していた。 また、既報告の大分県別府市での調査結果から、鉄細菌由来のパイプ状とラセン状の粒子を含むベンガラ(以下、PR類)が顕著に採用され、他地域ではほとんど採用されていないことから、このPR類が別府産のベンガラの指標になる可能性を考え調査を行ってきた。しかし、今回の宮崎県の地下式横穴墓出土のベンガラの一部にPR類の採用が認められた。この地下式横穴墓は、通常の大きさで副葬品を持たないため、遠隔地からもたらされたベンガラが採用される意味を見出し難い状況であった。さらに、福岡県の一部地域の墳墓においても同様な状況が確認された。従って、PR類のベンガラは別府産に限定できるものではなく、在地系のベンガラの一つとして各地で認められるものと考えた。 本科研費は、当初の計画では令和5年度に終了予定であったが、途中コロナ禍による調査の中断が生じたため、延長して令和6年度も調査を実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍による外出制限により分析資料の現地調査が困難な時期があり、計画通り調査を進めることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
1か年度の研究期間の延長を行い、事業を完了する見込みである。
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Causes of Carryover |
コロナ禍による外出制限により現地調査を計画通り進めることができず、事業を延長した。次年度は予算の範囲で計画的に現地調査を行い、事業を完了する予定である。
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