2023 Fiscal Year Annual Research Report
The Reconstruction Process of Risshakuji Temple and the Origin of Popular Beliefs: An Examination of the Builders of Stone Cultural Properties
Project/Area Number |
21K00969
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
荒木 志伸 山形大学, 学士課程基盤教育院, 教授 (10326754)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 立石寺 / 霊場 / 石造文化財 / 庶民信仰 / 松島 / 木札 |
Outline of Annual Research Achievements |
立石寺の石造文化財は、踏査が困難なエリアのものを除いて、調査がほぼ完了した。磨崖供養碑について、機材の向上により再調査の必要性が生じたものが複数出てきた。そこで石造文化財の出現をさぐる上で重要なエリアである弥陀洞地区について、磨崖供養碑の銘文調査をおこなった。得られた形式・銘文内容等のデータについて『村山民俗』上で公表している。 立石寺の石造文化財の建立者の分析について、松島瑞巌寺の形式・銘文との比較検討をおこなった。磨崖供養碑について、立石寺では板碑形が圧倒的であるのに対し、松島ではバリエーションがあり、墓石・供養塔等と同じ形式変遷をしていることが判明した。石造文化財に刻まれた建立者については、松島では雄島を中心に屋号が多く商人層が主流と考えられる一方で、立石寺にはそうした事例が1例のみであることもわかった。これらの分析結果については『山形大学歴史・地理・人類学論集』に掲載し、インターネット上でも公開している。なお、他の霊場との相違点を探るため、いくつかの霊地・霊場の現地踏査をおこない、情報収集をおこなった。 こうしたなか、立石寺で膨大な木札が発見され、研究は新たな展開を迎えた。庶民が先祖供養のために山内に納めたものと推測される。石造文化財と同様、文献史料が乏しい立石寺において、基層信仰の実態につながる重要な資料である。そこで、概要を把握するための調査を実施した。その結果、全体の量は10万点と推測できた。銘文のなかに「寛文九年」(1669)から「元禄五年」(1692)までの紀年銘が確認でき、石造文化財と同時期のものと判明した。戒名にみえる道号からは、石造文化財以上に多様な宗旨・宗派が確認できる。その内容については2023年11月に日本山岳修験学会で発表をおこなったが、今後も引き続き検討をおこなっていきたい。
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