2021 Fiscal Year Research-status Report
出土動物骨の形質を用いた沖縄先史時代のブタ飼育・利用実態とその変遷プロセスの復元
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21K00972
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
新美 倫子 名古屋大学, 博物館, 准教授 (10262065)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ブタ / イノシシ / 形質 / 家畜化 / 沖縄 |
Outline of Annual Research Achievements |
沖縄県の縄文時代遺跡出土イノシシ類については、これまでの研究代表者による検討から、沖縄本島の嘉手納町野国貝塚(縄文早期)では、出土個体群の大部分が野生イノシシではなく家畜化されたブタであることが明らかにされている。そこで本年度は、これらの飼育可能性を検討した。出土下顎骨から年齢群別個体数と雌雄の個体数を算出したところ、年齢構成では、幼獣は少なく成獣が最も多かった。これは狩猟された野生個体群のあり方に近い。ただし、この成獣個体群には、野生個体群ではまれにしか見られない高齢個体がまとまって含まれていた。高齢個体は野生状態では生存が困難であるので、これらの存在は人間の管理・保護があったことを裏付けると思われる。このことから、沖縄の少なくとも野国貝塚に持ち込まれたブタは、再野生化してその野生個体群が狩猟対象になったのではなく、遺跡の人々によって個体群が飼育されていたと考えられる。また、雌雄比は若獣では雄がやや多いが、成獣では雌が多く、全体でも雌の方が多かった。これらの成果は、南島考古40号(「野国貝塚B地点出土イノシシ類の年齢構成と性比について」)に公表した。 そして、野国貝塚以外の沖縄本島と離島地域の縄文時代遺跡出土イノシシ類資料については、現在、形質等の観察と計測を行っている途上である。これらのデータを用いることにより、各遺跡での出土個体群中に家畜化されたブタが存在するか、存在するならその割合はどの程度か、また、それらの飼育の可能性についても考察できると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は沖縄県が長期にわたって新型コロナによる緊急事態措置・まん延防止等重点措置の適用対象とされた。その適用期間中は、沖縄県立埋蔵文化財センターなど出土資料の所蔵機関が、外部からの資料調査の受け入れを停止した。そのため、ほぼ半年間にわたり、沖縄県内での資料調査やサンプリングがまったくできなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度下半期には沖縄県の緊急事態措置・まん延防止等重点措置が解除され、資料の観察・計測にとりかかることができたものの、それがまだ途上である沖縄本島の縄文時代遺跡出土資料について、次年度はこれらの分析を終わらせたい。さらに、先島諸島など本島以外の地域についても分析を進め、少なくとも縄文時代に関してはイノシシ類の形質の時代性・地域性について把握したい。これと並行してイノシシ類遺体の年代測定も進める予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、2021年度の上半期に沖縄県内での資料調査やサンプリングができなかったため、形質分析を行った出土資料の放射性炭素年代測定を2021年度中に実施しなかったことである。これは、年度の下半期に形質分析を進めるのと並行して測定対象となる試料の選出を行ったものの、下半期は測定委託料が繁忙期料金となって高騰するので、これが比較的安い閑散期料金となる2022年度の上半期に入るまで待っていたためである。そこで、2022年度はまずこれらの資料の年代測定を上半期に実施する予定である。
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Research Products
(2 results)