中国初期王朝期長城地帯における集団間交流と生活様式の研究―土器動態の背景を探る―

2022 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 21K00984
• Research Institution: Kashihara Archaeological Institute , Nara prefecture
• Principal Investigator: 齊藤 希 奈良県立橿原考古学研究所, 調査部調査課, 主任研究員 (10808108)
• Project Period (FY): 2021-04-01 – 2025-03-31
• Keywords: 長城地帯 / 中原地域 / 新石器時代 / 中国初期王朝期 / 植物遺存体

Outline of Annual Research Achievements

本年度も新型コロナウイルス流行の影響により、中国での資料の実見・遺跡の踏査などをおこなうことはできなかった。また、年度途中からは産前産後の休暇および育児休業の取得に伴い研究を中断しており、これにともない研究期間を令和６年度まで延長した。中断するまでには、研究対象地域の食料資源に関する情報として、動植物遺存体に関する既刊研究論文の整理・精読とデータ収集をおこなった。特に、長城地帯の中部にあたる陝西・山西北部および内蒙古中南部の黄土高原地帯から中原地域にかけての地域を中心として、新石器時代から商代までの植物遺存体研究データの収集と統合を進めた。そして、これらを通じて植物利用のあり方の時期的変化と地域差について考察した。この研究成果については、令和５年度に論文として発表予定である。また、土器の器種構成や型式などの分布状況を検討するため、発掘調査報告書や簡報からの土器に関する情報の収集と図面の整理を継続しておこない、土器の型式分類作業を進めた。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

新型コロナウイルスの流行等による影響により、当初計画していたように中国へ渡航し資料調査を実施することが難しい状況にあった。しかし一方で国内でできる報告書や学術雑誌からの情報収集やデータ、図面の整理はほぼ計画どおりに進めることができた。動植物遺存体に関してのデータも集成を進め、土器の拡散の背景にある生活様式についての検討も進めている。しかしながら、CNKI（中国学術文献オンラインサービス）で閲覧できる学術論文に限りがあるといったように、アクセスできる資料や最新情報が十分でないという問題もあった。今年度後半は研究の中断もあり、当初の研究計画からは進捗が遅れざるを得ない状況となっている。

Strategy for Future Research Activity

土器の複数レベルでの分布状況の整理のため、分類・編年の枠組みを完成させる。また、既に収集・整理している植物遺存体に加えて、動物遺存体についてのデータ収集と地域差・時期差の検討をおこなう。同時に、近年増加している食性分析に関する論文を集成し、当該地域の食料資源に関する情報を統合する。
土器の用途・使い分けに関する民俗事例に関しては、日本や東アジアを中心に参考になりそうな先行研究を調査し、器種構成・サイズ分化と食料資源・生活様式との相関関係を整理する。
現地での資料調査に関しては、土器の装飾、製作技術の情報を得るために土器の実見をおこなうことを目的に、対象資料を絞り込み、渡航先での調査実現に向けて関係する諸機関との調整をおこなう。

Causes of Carryover

新型コロナウイルス流行の影響により、当初の研究計画で予定していた中国への渡航がすべて実現できなかった。さらに、国内外の学会もオンライン開催が多かったこともあり、旅費を使用しなかった。また、人件費に関しても今年度途中から産休育休による研究の中断をしていたことにより、データ収集や整理の補助を依頼する研究支援員の雇用が困難であった。次年度以降は渡航の実質的制限も緩和してきており、中国の研究機関との調整次第であはあるものの、年間１、２回の渡航を予定している。また、学会の対面形式での開催も増えたことから国内旅費の使用も発生する計画である。研究支援員に関しては、まずは令和５年度４、５月で研究支援員の雇用を予定している。