2022 Fiscal Year Research-status Report
EBPMに向けた地域格差問題と地方圏における人口移動に関する研究
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21K01047
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
豊田 哲也 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(社会総合科学域), 教授 (30260615)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥嶋 政嗣 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 教授 (20345797)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 人口移動 / 地域格差 / COVID-19 / 就業構造 / 居住地選好 / Uターン |
Outline of Annual Research Achievements |
国内の人口移動パターンは、日本全体での東京一極集中、地方ブロックの中での広域中心都市への集中、地方県における県庁所在都市への集中が3つの層で同時に進行している点に特徴がある。2019年末から予期せぬ形で生じた新型コロナウィルスCOVID-19感染症の拡大にともない、東京都への人口流入が大きく減少したが、それが地方における人口流出の抑制や拠点都市の形成につながるかは予断できない。本研究の目的は、地方創生に向けた人口政策立案の基礎となる人口移動の経済的要因と社会的要因を明らかにすることにある。 人口移動の全国的動向については、住民基本台帳移動報告の最新データを用いて分析をおこなった。コロナ禍の影響で人口移動は全体的に強く抑制されたが、地方圏で転出超過が転入超過に転じた地域はほとんど見られないこと、地方圏では2020年と2021年に大都市圏への転出超過が縮小したが、2022年には再び拡大する兆しが見られることが明らかになった。四国地方の県庁所在都市では、県内市町村からの人口流入が減って人口減少に歯止めがかかっていない。 徳島県出身者を対象に、移動履歴と居住地評価に関するインターネットアンケートを2021年度に実施し分析を進めている。その結果から、感染症へのリスクと安全性という観点では徳島県への評価は相対的に高いが、そのことがUターンの促進要因となっているとは言えないこと、大都市圏の専門技術職を除くとリモートワークの実施率は低いことがわかった。また、進学や就職と居住履歴の分析から、初職時の県内残留行動に関して賃金格差仮説、就業機会格差仮説、親の持家仮説を男女別に検証した。男女ともに親の持家仮説が支持され、生活コストの軽減や親族との絆が地方圏への還流に影響している可能性を指摘できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
投稿論文2件が公刊された。徳島県EBPM研究会として研究成果について議論し、県庁内でニュースレターを発行している。徳島県出身者を対象とするインターネット・アンケート調査の分析から導かれた人口移動の経済的・社会的要因に関するいくつかの仮説を検証するため、対象地域を全国に拡大し18から59歳の男女2万人を対象とするアンケート調査を企画している。
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Strategy for Future Research Activity |
徳島県デジタルとくしま推進課、EBPM研究会と協力しながら、アンケート調査の分析をおこない成果の発表につなげていく。就業や所得など経済的要因から生じる地域格差だけでなく、家族との関係やライフスタイル、価値観など社会的要因が居住地選択に及ぼす影響を明らかする。
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Causes of Carryover |
2022年度は徳島県出身者を対象に、2023年度にはそれ以外の対象者に独自アンケート調査を実施する計画であったが、これを一体のものとしておこなうことに変更した。それにともない、2022年度予算の一部を繰り越したが、費用の支払いは4月に完了する予定である。
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Research Products
(2 results)