2021 Fiscal Year Research-status Report
事業者間契約における不当条項規制に関する近年のドイツ法の議論の比較法研究
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21K01220
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
武田 直大 大阪大学, 高等司法研究科, 准教授 (80512970)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 約款 / 不当条項規制 / 事業者 / 定型約款 / 契約 / ドイツ法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、従来我が国において議論の手薄であった事業者間契約における不当条項規制の対象や基準の問題について知見を深めるため、事業者間契約における約款規制の規制緩和が盛んに論じられ、重要な立法課題の1つとなっているドイツ法の議論を調査・検討することを目的とする。このような研究目的のもと、2021年度においては、ドイツ語文献・資料の収集・整理および読解に取り組むことを計画した。 同実施計画に基づき、上記のテーマに関するドイツの主要文献の読解を行った。具体的には、Lars Leuschner, AGB-Recht im unternehmerischen Rechtsverkehr, 2021; Mittias Wendland, Vertragsfreiheit und Vertragsgerechtigkeit, 2019; Constantin Axer, Rechtfertigung und Reichweite der AGB-Kontrolle im unternehmerischen Geschaeftsverkehr, 2012; Tobias Miethaner, AGB-Kontrolle versus Individualvereinbarung, 2010(途中まで)といった諸文献である。 これらの文献を読み進めることにより、ドイツにおいて議論されているのは、単に事業者間契約における約款規制の法政策的なあり方ではなく、そもそも約款の内容規制が何故正当化されるのか、という基本問題であることが鮮明となった。そこでは、法と経済学に対する応接を伴いつつ、契約自由・契約正義・効用といった基本的な諸原理相互の関係や、約款による契約の締結過程における当事者行動のあり様が論じられている。本研究においても、これらの基本問題を意識していく必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要において述べたように、2021年度は、ドイツ法の文献を読み進める計画であった。この計画に則り、実際に、研究テーマに関する主要な文献を読み、それぞれのまとめを作成することができた。そして、本研究課題に関する基本的な文献を読破したことで、ドイツ法の状況の全容をある程度つかむことができた。 なお、確かに読破した文献の数は少数であるが、いずれも大部のものである。特に、Mittias Wendland, Vertragsfreiheit und Vertragsgerechtigkeit, 2019は、本文1000頁に迫る大著であり、また、内容も難解であるため、読解するのに時間を要した。このような文献を読み終えたことは、本研究の進捗にとって大きな意味を有する。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も、当初の研究計画に則り、ドイツ語文献の読解に努めていきたい。もっとも、文献を読む際の問題意識・分析視角については、若干の修正が必要であると考えている。当初の研究計画では、①一定の事業者間契約の約款規制からの除外の是非、②個別交渉条項の判断基準、③不当条項規制の基準という3つの検討課題を立てて、ドイツ法の分析に当たる予定であった。しかしながら、研究実績の概要において述べたように、これまでの文献読解において、ドイツにおける議論が約款規制の基本的な正当化問題と深く結びついたものであることが明らかになった。そこで、今後の研究においては、そのような基本問題への応接により比重を置きつつ、約款規制の正当化論と密接に関連する上記①・②の検討課題を中心に、研究を進めていきたい。
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