2021 Fiscal Year Research-status Report
モデル不確実性を考慮したマクロ経済モデルの実証的評価と分析手法の開発
Project/Area Number |
21K01420
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大久保 正勝 筑波大学, システム情報系, 准教授 (30334600)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | モデル不確実性 / 曖昧さ回避 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的の一つは、近年提案されたモデル不確実性を考慮したマクロ経済モデルの実証的評価に必要な分析枠組みを構築することであった。モデル不確実性を考慮した先行研究には、消費資産価格モデル(CCAPM)を拡張することで資産価格決定に関わる実証的な問題に着目したものがいくつか見られる。本研究の第1年目である令和3年度は、以上を踏まえ、大きく分けて2つのことを行った。第1に、モデル不確実性の表現方法の一つである曖昧さ回避(ambiguity aversion)を組み込んだモデルのうち、Hayashi and Miao (2011, Theoretical Economics)によって提案されたrecursive smooth ambiguity(以下、再帰的SA)モデルの拡張可能性を検討した。再帰的SAモデルは、マクロ経済学や資産価格理論の文献において重要な位置を占める再帰的効用モデルを特殊ケースとして含む点で優れている。本研究では、Yogo(2006, Journal of Finance)の耐久消費モデルと再帰的SAモデルを組み合わせることで、先行研究で用いられた他のモデルも特殊ケースとして含むように拡張を試みた。その結果、再帰的SAモデルの拡張版においても、ある条件下でオイラー方程式が導出可能であることを確認した。第2に、再帰的SAモデルの推定方法を検討した。再帰的SAモデルの推定では、条件付き期待値の推定を伴うが、これに対してノンパラメトリック推定法の応用を検討した。この過程で、従来、耐久消費モデルの推定に用いられてきたモーメント制約が持つ問題点を明らかにし、その対処方法として2段階推定法が適用可能であることを確認した。また、この問題点の影響を評価するために、実証分析の準備を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の初年度に予定していた文献サーベイと分析の基礎となる主要モデルの検討を概ね完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の年度末ごろから開始した実証分析を進めるとともに、文献調査とモデルおよび推定方法の検討を並行して行う。また、初年度までに得られた成果を論文にまとめ、他の研究者からのアドバイスを取り入れながら、研究を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
初年度の計画段階では、学会参加に伴う旅費を計上していたが、コロナ禍によりオンライン開催となったため、使用の必要がなくなった。また、研究補助に対する人件費を計上していたが、研究の方針がより明確になった次年度に使用するほうがより適切であると判断した。したがって、次年度使用額は、学会参加に伴う旅費や参加費、研究補助に対する人件費に充てる予定である。
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