2023 Fiscal Year Research-status Report
期待インフレ率の区間データを用いたインフレ期待形成の異質性の動学分析
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21K01434
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
村澤 康友 甲南大学, 経済学部, 教授 (00314287)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | インフレ期待 / 無回答 / ロバスト統計学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題に関連する令和5年度の研究実績は,具体的な成果としては論文・学会発表ともになかった.本研究課題の進行状況を以下に述べる. 本研究課題の目的は,期待インフレ率を区間で回答する調査の繰り返し横断面データを利用して,インフレ期待形成の異質性の要因を動学的な視点で明らかにすることである.研究を進める中で,期待インフレ率を尋ねる質問に対しては,「分からない」という回答が多いことに気づいた(例えばアメリカのミシガン調査では10%前後).「分からない」という回答の取り扱いについて,インフレ期待形成の実証研究を調べたところ,単純に無視するケースがほとんどであった.しかし「分からない」という回答を無視すると,標本選択バイアスが生じる恐れがある.ある論文について,標本選択モデルによる再検証を行ったところ,実際に標本選択バイアスが生じていると判明した. 多くの先行研究が標本選択バイアスを補正していない理由の1つとして,標本選択モデルが想定する正規分布の仮定に対する懸念が考えられる.そのような懸念に対処するために,モデルの定式化の誤りに対して頑健(ロバスト)な分析手法を検討した.標準的な標本選択モデルについては,ロバストなHeckman推定量が既に開発され,Rパッケージとして実装されており,それを用いて先行研究の再検証を進めている.将来的には区間データの標本選択モデルについて,ロバストな推定量の開発を検討している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題に本格的に着手する前に,期待インフレ率の調査データにおける「分からない」という回答の取り扱いを検討すべきと考えた.現在はロバスト統計学の勉強に時間を要しており,論文の完成がやや遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
現在はロバスト統計学の勉強と並行して論文の執筆を進めている.できるだけ早急に論文を完成させ,国内外の学会発表に応募するとともに,査読付き国際学術誌に投稿する予定である.その後は本来の研究課題に戻り,「分からない」の回答の取り扱いに注意を払いつつ,インフレ期待の区間データの分析を進める予定である.
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Causes of Carryover |
(理由)論文の完成が遅れ,学会発表を行わなかったため,旅費の支出がなかった.また研究機器の購入も今年度は不要であった. (使用計画)論文が完成次第,国内外で学会発表を行うための旅費として使用する予定である.
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