2021 Fiscal Year Research-status Report
大企業と中小企業が混在しているときの産業政策に関する理論的研究
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21K01453
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
森田 忠士 近畿大学, 経済学部, 准教授 (50635175)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 和博 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (10362633)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 大企業 / 中小企業 / 研究開発投資 / 市場規模 |
Outline of Annual Research Achievements |
大企業と中小企業が両方存在している経済に焦点を当てて研究を行った。この研究において、大企業とは産業全体の価格をみて自分の価格を決める寡占企業とした。一方で、中小企業とは、産業全体の動向とは無関係に自身の費用と需要曲線のみを見て価格を決める独占的競争企業とした。このとき、貿易の自由化などで市場規模が拡大した場合、大企業と中小企業とではどちらが研究開発投資を積極的に行うのか、という問題に取り組んだ。そして、社会にとって最適な大企業と中小企業の生産量や研究開発投資量について分析を行った。その結果、以下の二つの成果を得ることができた。 一つ目は、市場規模の拡大は中小企業の行動には影響を与えないが、大企業の研究開発投資を増やすことがわかった。中小企業は自身の大きさが小さく、経済全体に与える影響は微少だと考えて行動しているので市場規模の拡大は中小企業の行動に影響を及ぼさない。一方で、大企業は市場規模の拡大により多数の中小企業が市場に参入してきて、自身の市場シェアが減少することを知っている。そこで大企業は研究開発投資を増加させて、自身の生産性を向上させて、生産量や利潤を増やそうとすることがわかった。二つ目は、市場経済での資源配分と大企業が存在する社会での最適な資源配分についての比較である。市場経済において、大企業は産業全体の価格をみて自身の価格を決定しているので、大企業の設定する価格は高く生産量は過少になっていることがわかる。そこで、政府はこの大企業の高価格を是正するために、中小企業よりも多くの補助金を大企業に与える必要がある。研究開発投資に関しても同様に、大企業は過少投資になっているので、中小企業よりも多くの補助金を受ける必要があることを示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、当初の予定通り大企業と中小企業が混在し、そして両方の企業が生産性を上昇させる研究開発投資を行っている経済モデルを構築することができた。しかし、研究成果を世間に広めるための学会活動やワーキングペーパーなどへの出版には至っていない。来年度は、研究成果を世間に知っていただくための活動を行いたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、2021年度の研究成果を国内外の学会で報告し、研究成果を世間に広めるとともに研究成果をよりよりよい形でまとめる。また、研究会では国内外の研究者と積極的に議論を行って論文の質を高めていき、海外査読付き雑誌に投稿する。このモデルを用いて、大企業を世界的な多国籍企業と考え、中小企業を各国に存在する企業と考える。多国籍企業は自由に立地を選択でき世界市場への自身の影響を知っていると考えることは妥当であると考えられる。このとき、各国政府は多国籍企業を自国に誘致するために、法人税率をどのように設定するのか、という問題に取り組む。そして、各国が自由に法人税率を決定しているときの税率と、世界中の経済厚生を最大にするための法人税率とを比較する。
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Causes of Carryover |
2021年度はコロナ禍により、国際学会がオンラインとなり国内または国際出張することができなかった。2022年度は、国際学会が対面で開催されることが多くなるので、積極的に国際学会に参加する予定である。
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Research Products
(4 results)