2021 Fiscal Year Research-status Report
戦後復興期日本の闇物資流通・取締と民衆:1948年甲府専売支局管内闇煙草の事例
Project/Area Number |
21K01617
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Research Institution | Dokkyo University |
Principal Investigator |
山本 裕 獨協大学, 経済学部, 准教授 (10550113)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 廉孝 慶應義塾大学, 文学部(三田), 准教授 (90708398)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 日本経済史 / 戦後復興期 / 闇市場 / 煙草 / 専売 / 山梨県 / 日本専売公社 / 大蔵省専売局 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の1年目にあたる令和3年度は,本研究課題の遂行に必要な史料・データの収集・分析と先行研究のサーベイを進めた。研究代表者と研究分担者が実施した作業は以下の通りである。 研究代表者(山本)は,国立国会図書館で『山梨日日新聞』と『山梨時事新聞』を閲覧し,闇煙草取締と関連する記事を入手した。1948年時点の山梨県では「御用新聞」的性格の『山梨日日新聞』と革新的論調の『山梨時事新聞』が発行され,同一の事件を扱った記事であっても両紙の論調は異なっていた。そこで,論調の相違に着目しつつ,関連記事の目録を作成した。 研究分担者(前田)は,西南学院大学図書館所蔵『専売取締事件簿』(大蔵省専売局・1948年)の分析を進めた。同史料は甲府専売支局が1948年に実施した取締の対象者約500名の情報を網羅的に記録し,同史料の全点撮影を終えた。同史料は全て毛筆・鉛筆・ボールペン・万年筆で手書きされ,崩し字で記入されている場合も少なくない。そこで,記入内容を全て読み下し,エクセルにまとめた。 さらに,以上の作業と併行し,研究代表者と研究分担者は以下2点の作業を共同で進めた。第1は,専売法違反の取締に関する法令と取締状況を概観可能な統計書の入手を進めた。これまでに取締法令を網羅した『取締ノート 昭和二十九年』(日本専売公社・1954年),専売制度の運用実態を示す『専売統計年報』(各年版),『監視回報』(各月版)などを古書店より購入した。第2は,闇市場(Black Market)の経済史的考察が進んでいるヨーロッパにおける文献の入手・読解を進めた。そのなかでもZierenberg, Malte. (2015) Berlin’s Black Market: 1939-1950. Hampshire: Palgrave Macmillanの精読を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は,(1)塩事業センター塩業資料室・西南学院大学図書館所蔵『局報』など大蔵省専売局関係史料に依拠し,闇煙草取締に関する法令と取締体制の整備過程を分析する,(2)『専売局年報』など大蔵省専売局刊行統計資料に依拠し,戦後復興期における全国的な取締状況を概観する,(3)西南学院大学図書館所蔵『専売取締事件簿』に依拠し,甲府専売支局管内における闇煙草流通の実態と取締状況を分析する,(4)国立国会図書館・山梨県立図書館所蔵『山梨日日新聞』・『山梨時事新聞』に依拠し,(1)-(3)の分析結果を踏まえつつ,闇煙草流通・取締に対する民衆の認識を考察することが目的である。これら各4点に関連する考察で必要な史料・データ収集の目処を付けることができた。なかでも(2)・(3)に関連する史料・データはほぼ全て収集が完了している。したがって,3年計画である本研究課題の1年目として順調に進展させることができたと判断しうる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度に研究代表者(山本)と研究分担者(前田)はそれぞれ以下の作業を進める予定である。まず研究分担者(前田)は,本研究課題の基礎となる甲府専売支局管内における闇煙草流通の実態と取締状況を収集済の西南学院大学図書館所蔵『専売取締事件簿』(大蔵省専売局・1948年)及び『専売統計年報』など統計資料から分析し,令和4年秋頃を目処に”Japan’s Suburban Black Market in the Late 1940s: Illegal Tobacco at the Periphery of Mount Fuji”としてディスカッションペーパーにまとめる予定である。この成果を踏まえ,研究代表者(山本)は『山梨日日新聞』・『山梨時事新聞』の分析を進め,闇煙草流通・取締に対する民衆の認識を考察する予定である。 以上の研究代表者と研究分担者による成果は,本年度より国内外の学会・セミナー等で報告し,同分野の研究者と議論を進めていきたい。そして,本年度もしくは次年度(令和5年度)の前半までに査読付き学術誌へ投稿する計画である。
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Causes of Carryover |
COVID-19と緊急事態宣言等発出の影響により計画していた史料調査全てを実施することはできなかった。それゆえに,旅費の支出額が計画を下回った。しかし,現時点では少しずつCOVID-19の影響も弱まりつつあり,令和4年度において前年度に実施予定であった史料調査も実施する予定である。
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Research Products
(7 results)