2021 Fiscal Year Research-status Report
倫理的消費における画像・動画を用いた情報行動とアイデンティティに関する研究
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21K01754
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
玉置 了 近畿大学, 経営学部, 准教授 (40434849)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若林 靖永 京都大学, 経営管理研究部, 教授 (70240447)
堀川 宣和 星城大学, 経営学部, 講師 (20761604)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | SNS / リアクション / 倫理的消費 / テキストマイニング / 内容分析 / 画像認識 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は3つの研究を実施した。第1に倫理的消費に関するSNS上の情報発信について,その題材としてオーガニック消費に関するSNS上の情報発信に着目し,オーガニック消費に関する画像投稿にいいねとリツイートというリアクションが得られる要因の解明に取り組んだ。まず文献研究を行い,以前の研究の再検討としてエピソードを語るナラティブ性の高さといいねの関係とリツイートを促す要因の解明に関する仮説を設定した。Twitterからorganicをキーワードにツイートをダウンロードし,オーガニック食品に関する投稿を抽出する手法を検討した。食品に関するツイートや文書データを教師データとした深層学習による抽出なども試みたが,最終的にGoogle社の物体認識APIとトピックモデルを用いた画像の内容分類と食品が写された画像が添付されたツイートを抽出する方法が簡便かつ妥当性が高い結果が得られた。また抽出したツイートのテキストに対し,LIWCを用いた文章の主体や動作,感情の定量化を行うとともに,いいねとリツイートの有無を被説明変数としたロジスティック回帰分析を行い,両者の要因を解明した。本研究の結果は国際学術誌に投稿中である。第2に,我が国の消費者の倫理的消費それ自体の検討を目的として,ローカルフードの購買購買行動をアイデンティティと共感の視点から検討した。生活協同組合の協力のもと質問紙調査と利用履歴を用いた分析を行った。この研究結果も論文として国際学術誌に投稿中である。第3の研究は,前年度に行ったSNS上の京都観光に関する画像投稿とリアクションに関する研究に対して,その査読対応として論文の修正と英文の再校正を行い公刊に至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,消費による社会的課題の解決を志向する倫理的消費(エシカル消費)に着目し,そこでの情報探索・発信という情報行動に着目するものである。特に,近年のSNSにおける画像・動画投稿,拡散や1クリックの返答は倫理的消費と密接に関わるため,SNSの画像・動画の発信及び探索と反応を,情報の認知性・感情性とアイデンティティの視点から検討することを研究課題としている。本年度は,SNSから実際の倫理的消費に関する画像投稿と反応データを収集し機械学習を用いた内容分析を行う手法を検討し,画像の内容とリアクションの関係性を定量的に解明できた。また,研究の視点となる倫理的消費とアイデンティティの関係についても,ローカルフードに限定される研究であるが,その購買行動に消費者の利他的志向や社会的責任だけで無く,自己志向のアイデンティティが影響していることもあわせて解明した。この研究では,ID-POSデータと呼ばれる小売業の購買履歴と質問紙調査を組み合わせて消費者の購買行動を解明するという手法の検討も行われ,SNSにおける情報発信という主たる研究課題からは乖離するが,態度と行動のギャップが強くあらわれるといわれる倫理的消費に関する消費者行動を検討する1つの手法の検討としても意義がある結果である。本年度は以上の2つの実証研究をすすめ,いずれも掲載には至っていないが国際学術誌への投稿段階にまで2編の論文を完成させているということもあり,順調に進んでいると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度解明した画像投稿とリアクションに関する研究はオーガニック食品に関する研究である。そのため,その他のローカルフードやフェアトレードなどの倫理的製品とリアクションの関係の再検証,またTwitter以外のSNSに関する検証も必要となる。さらに,本研究は実際の投稿データを用いた分析を行っているが,その投稿データの抽出方法の洗練や実際の行動データの結果を元に,実験法による因果関係のより厳密な検証も必要と考えている。さらに,近年では動画を用いたSNS投稿も盛んである。その分析のためには,画像の連続体としての動画内容や音声データのテキスト化の手法の開発が必要である。倫理的消費に関する動画投稿は現状消費者よりもYouTuberや生産者の発信が多いが,消費者投稿も収集の対象として位置付け,画像と同様の課題や仮説の設定を行い,内容分析によって画像と動画の違いを解明する。また,情報発信だけで無くSNSなどを通じた情報探索も消費者の倫理的消費行動を検討する上で重要課題である。本研究は,生産者等の動画視聴を消費者の情報探索として位置付け,消費者のアイデンティティの視点から動画内容への反応や選好との関係を検討する。また,本年度実施した倫理的消費における購買行動とアイデンティティの関係も,情報行動とアイデンティティの研究の基盤として重要な視点である。特に倫理的消費は,企業などの継続的な商品提供と継続的な購買行動が実現して初めて,その社会的課題の解決が実現する。本年度の研究成果は,3年間の購買実績の多さに消費者のアイデンティティ形成志向が影響することを示唆するものであったが,3年間の総合計によってその実績を説明した。購買行動の時系列分析によって,持続的な購買行動の解明も必要と考えている。
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Causes of Carryover |
年度末から新年度開始直後に論文の修正にかかる英文校閲費などの費用発生が生じる可能性があったため次年度使用分として留保した。次年度使用分は現在投稿中の論文の公表にかかる費用として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)