2022 Fiscal Year Research-status Report
業績測定システムを通じたトップ・マネジメント・チームの多様性の効果に関する研究
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21K01777
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
乙政 佐吉 小樽商科大学, 商学部, 教授 (20379514)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 業績測定システム / 経営上層部理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、わが国企業における近年の統治構造改革を踏まえて、「どのようなトップ・マネジメント・チームの下でどのように業績測定システムが設計・運用されれば効果を生み出すのか」について実証的に明らかにすることを目的としている。第2年度には、事例研究を本格的に展開するとともに、事例研究から得られた定性的なデータから、鍵概念の定義や理論的枠組みの精度向上を図っている。 研究実績としてはまず、日本管理会計学会2022年度年次全国大会にて「多様化するマネジメント・コントロールの現状整理と展望」についてスタディグループの中間報告を共同で行った。わが国マネジメント・コントロール研究の特徴を書誌学的分析を通じて明らかにしている。 次に、「北海道の自治体の業績管理システム 芦別市の事例」を共著にて執筆した。北海道の自治体の業績管理システムの実態を明らかにすることを最終的な目的として事例研究を展開する中で、芦別市の業績管理に対する取組について記述している。現在、芦別市では、第6次総合計画を中心として業績管理システムが運用されている。第6次総合計画のもとで、基本構想は基本計画に展開されるとともに、実施計画(事務事業)に落とし込まれる。また、体系的に展開される総合計画の実施を、財政基盤強化集中改革プラン、公共施設等総合管理計画、財政収支見通しが補強する。計画の実行・統制段階においては、事務事業評価が中心となる。ただし、事務事業評価の結果は、次年度の予算編成や市政執行方針の策定につながっているものの、総合計画上の重点目標の施策の評価にまでは至っていない。芦別市における業績管理システム運用上の課題は、事業の優先順位の決定に事務事業評価の技術的な困難さが障害になっていることである。加えて、芦別市の荻原市長は、芦別市の業績管理システムの改善点として、第三者評価の導入、計画期間の短縮、他自治体との連携を挙げる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、わが国企業における近年の統治構造改革を踏まえて、「どのようなトップ・マネジメント・チームの下でどのように業績測定システムが設計・運用されれば効果を生み出すのか」について実証的に明らかにすることを目的としている。 初年度には、先行研究のレビューを通じて理論的枠組みおよび仮設命題の精緻化を研究活動の中心とした。第2年度においては、先行研究のレビュー結果を踏まえつつ、事例研究を本格的に実施している。事例研究を進めるにあたっては、3つの手順を踏んでいる。①業績測定システムを中心として、公表資料に基づいた対象企業の事例を記述する、②記述した事例から調査すべき質問項目を導き出す、③対象企業にインタビューを調査の依頼を行う。なお、事例研究の対象は、営利企業に止まらず、非営利組織(地方自治体)にも広げている。 3つの手順を踏んだ上で、芦別市の事例研究に関しては、「北海道の自治体の業績管理システム 芦別市の事例」として公刊している。北海道の自治体については、未公表ながらも、芦別市の他にもインタビュー調査を既に実施している。今後も継続的に展開七て行く予定である。 最終年度である第3年度には、事例研究を継続しながら、必要なデータを質量ともに収集できたと判断した時点で、質問票の作成・発送を実行することによって、方法論的トライアンギュレーションを実施する。先行研究のレビュー、および、事例研究を通じて、理論的枠組みおよび仮設命題の導出を着実に進めてきたと考えている。以上から、最終年度の研究を進めるにあたって、本年度はおおむね順調に研究が進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、「どのようなトップ・マネジメント・チームの下でどのように業績測定システムが設計・運用されれば効果を生み出すのか」について実証的に明らかにすることを目的として、研究目的を達成するために、方法論的トライアンギュレーションの実施を計画している。具体的には、「①先行研究のレビューに基づいた理論的枠組みの構築」を経ながら、「②事例研究による仮設命題の精緻化」を通じて、「③大量サンプルによるサーベイ調査を通じて定量的研究を定点的に実施」する。本研究を進めるにあたっては、①および②のプロセスを繰り返し実施することになる。 本年度終了時点において、①の先行研究のレビュー、および、②の事例研究を実施している。しかしながら、③の定量的研究を実施する前に、さらに理論的枠組みおよび仮設命題の精緻化を図りながら、内的妥当性を高めておくことが肝要であると考えている。 したがって、最終年度もまた、第一に、最新の研究成果を取り込むために継続的に先行研究のレビューを実施する。第二に、本年度は主に北海道の地方自治体を対象としたものの、調査対象企業の選定を継続しながら引き続いて事例研究を展開する。第三に、質問票調査を通じて、先行研究のレビューおよび事例研究から導き出した仮設命題を検証する。第四に、実証結果を回答企業にフィードバックしつつ、必要に応じてフォロー調査を実施する。最後に、先行研究のレビュー、事例研究、定量的研究から得られた成果についてはそれぞれ、国内外での学会において報告するとともに、論文としてまとめ上げた上で学会誌に投稿を行う。
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Research Products
(2 results)