2022 Fiscal Year Research-status Report
Constructing a Methodology for the Study of Media History Using Visuality as Evidence: An Empirical Study of Advertising in the Showa 30's
Project/Area Number |
21K01847
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
竹内 幸絵 同志社大学, 社会学部, 教授 (40586385)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 広告史 / デザイン史 / 歴史社会学 / ヴィジュアルメディア研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目は、1、基礎調査研究を引き続き実施しつつ、2、本研究が射程とする昭和30(1955)年前後の日本の広告の視覚性にどのような変化が起き、それが何を要因としていたのか、その社会的・文化的要因についての考察にとりくんだ。具体的には1、で得た成果、すなわち制作者らの証言、雑誌・新聞など当時のメディアに残された広告に対する評価や価値意識の表明、広告に関連するイベント情報の原資料などを重要な証左とし、これと実際の広告(紙媒体、電波媒体)の様態、その変化をあわせて検証した。このような従来の研究にはなかった広告の視覚性の特質を視野に収めた研究手法により、以下の成果を得ることができた。 今年度の成果は大きくは二つある。一つは、(一)昭和35(1960)年代後半から台頭し広告界に新風を吹き込んだと評価される広告制作者、石岡瑛子の制作活動と広告を、活躍した場の社会的地位、制作時の実態、そして制作された広告そのものに即して考察したものである。 二つ目の成果(二)は、昭和35(1960)前後の広告界の矛盾、すなわち広告効果としては既に下位にあった紙媒体の制作者の社会的地位と、広告効果の面で既に最重要視される存在であった電波媒体の制作者の社会的地位が逆転していた事実にかかる調査・検証・考察である。これは本研究の最大のテーマである。本年度はこのテーマに対し、1960年代の中盤まで継続したこの矛盾が、昭和43(1968)年を境に修正されていく事実を捉え焦点化し、研究を深めた。その転換には一部の愛好家にのみ好まれていた実験映画と呼ばれた映像制作のコミュニティと、テレビ・コマーシャルとの関連が指摘出来た。以上の二つの成果はいずれも、戦後の広告表現及び視覚文化の変遷をたどるうえで重要かつこれまで見過ごされてきた史実と考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基礎調査研究で初年度コロナ禍のため調査予定箇所の複数において調査が出来ない事態が発生したが、2年目でこれらをほぼ実施することができた。調査により予想を超える豊富な資料が所蔵されていた調査個所については調査完了とはならず、3年度に持ち越しとなった。 昭和30年代の広告の視覚性にかかる多角的な考察については、初年度の二つの成果に加え、今年度は発表と論文1本、投稿中で未掲載論文1本としてまとめることができた。 また文章化した成果以外に、基礎資料群と古書資料の詳細な突合により、当該時期にテレビ・コマーシャルの演出を数多く手がけていた映画監督、大林宜彦が制作したコマーシャルを同定し、大林を通した映像芸術潮流とテレビ・コマーシャルとの連続性、またそれが日本国内でどのような反響をもたらしたかについての考察に着手することができた。 以上のように当研究は順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の「研究の目的」「研究実施計画」から大きな変更はないが、2年間の調査・研究を終えた現時点で、射程とする期間を「昭和35年」を軸として、昭和45(1970)年ごろまでと置く必要性を認識している。これによる基本的な推進方策への影響はない。
|
Causes of Carryover |
「研究実績の概要」「現在までの進捗状況」に記載した通り、初年度の1、基礎調査研究 におけるコロナ禍の影響を受けた遅延は概ね2年度に実施できた。しかしごく一部実施を終えることができなかった。これが要因となって使用額に差異が生じた。3年目の早い時点でこれを補完するため、研究全体の進行には差支えが無いと考えている。
|
Research Products
(2 results)