2021 Fiscal Year Research-status Report
友情結婚にみる未婚化社会の友人関係と恋愛関係についての基礎研究
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21K01911
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
久保田 裕之 日本大学, 文理学部, 教授 (40585808)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 友情結婚 / 性愛規範 / 恋愛 / 友情 / 家庭内離婚 / 親なり規範 / 契約結婚 / 偽装結婚 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、研究計画において示した4つの研究内容のうち、1)家庭内離婚・家庭内別居に関する新聞雑誌記事分析と、2)日本における「友情結婚」事業者へのヒアリング調査を行うことで、日本における結婚と愛情の関連性の一端を明らかにした。 第一に、家庭内離婚・家庭内別居に関する新聞雑誌分析からは、夫婦間の情緒性や親密性の不在が問題化されはじめる1980年代にあった「夫婦が恋人のような意味で親密である必要がないのではないか」という視座は、1990年代にかけて次第に消失していったことが明らかになった。この成果は、令和4年度に論文として刊行されてる予定である。 第二に、日本における「友情結婚」事業者へのヒアリング調査からは、友情結婚の中でも事業者を通じて友情結婚相手を探す層に限って言えば、同性愛男女のみならず異性愛男性や無性愛・非性愛女性もまた性愛のない結婚を模索していること、その背後には日本における強力な皆婚規範と親なり規範が存在していること、翻って、子どもを育てるために夫婦の性愛関係が不可欠であるとは限らないことなどが明らかになった。この成果は、令和4年度初めに「友情結婚と性愛規範――日本における仲介事業者の調査から」(牟田和恵編『フェミニズム・ジェンダー研究の挑戦』収録)として刊行される。 総じて、初年度である令和3年度は、1)新聞雑誌分析と、2)当事者へのヒアリング調査という予備的な性格の強いものであるが、令和4年度以降の友情結婚当事者へのインタビュー調査のための準備という側面もあり、その意味でも議論の土台となる重要な知見が得られたと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍における調査の停滞が不安視されたものの、本研究の準備段階として重要な新聞雑誌記事分析と、本研究の鍵となる「友情結婚」事業者へのヒアリング調査を首尾よく終えたことで、研究は概ね順調に進展していると評価できる。具体的には、コロナ禍で雑誌記事収集に一部問題が生じたものの、むしろ郵送サービスを活用して効率的に研究が進められた。また、事業者との良好な協力関係のおかげで、コロナ禍とはいえ対面でのヒアリング調査(スタッフ4名)が可能になり、予定通り調査を遂行することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
続く令和4年度は、本研究の中核を占める、3)友情結婚当事者に対するインタビュー調査を控えており、コロナ禍でどの程度の制約を受けるのか、感染状況とともに見通せない状況にある。具体的には、対象者の自宅への移動、ないし、事業者のオフィスを利用した対面でのインタビュー調査に伴う感染リスクや、こうした感染リスクへの不安から調査対象が十分に集まらないといったケースが予想される。 これに対して、事業者との相談のうえで、インタビュー調査に先行してアンケート調査を実施することで、インタビューにまでは応じられないより多くの対象者にアプローチすると同時に、調査者や調査内容に関する理解を深めてもらうことで、その後のインタビュー調査を円滑にすすめることを考えている。既に、アンケート調査およびインタビュー調査に関しては、学内の倫理委員会での審査を終了しており、5月以降順次着手することになっている。
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Causes of Carryover |
令和3年度に未使用額が生じた原因は、1)コロナ下で学会出張の抑制、2)既存資源の活用、3)関連する学内研究費の活用による効率化などである。具体的には、1)コロナ下で国内外の学会対面開催が抑制され、延期やオンラインへの切り替わったことにより、出張旅費や英文校閲費が節約されたことがある。また、2)初年度のパイロット調査的な色彩の強い事業者調査については、既存のICレコーダーやノートパソコンを活用して対応することで、令和4年度以降に実施を予定しているより守秘性の高い当事者へのインタビュー調査に向けて購入を先送りにしたことがある。さらに、3)購入を予定していた書籍のうちいくつかは、類似のテーマを持つ学内研究費を活用することで節約することができた。 こうして生じた次年度使用額については、コロナ感染状況が未だ不透明であるものの、先送りされた学会旅費や、インタビュー調査分析のためのスタンドアロンPCの購入、追加の文献・書籍の購入に充てる他、インタビュー調査のケース数を増やすことで、より安全で詳細な分析が可能になるように使用する予定である。
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Research Products
(3 results)