2022 Fiscal Year Research-status Report
ディスレクシアにおける大細胞障害理論の検討:フリッカ順応によるフィルタ効果の解明
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21K02401
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Research Institution | Kyoto Notre Dame University |
Principal Investigator |
菊野 雄一郎 京都ノートルダム女子大学, 現代人間学部, 准教授 (10754723)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ディスレクシア / 大細胞系 / フィルタ効果 / 視知覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の第一の目的として、Razuk et al. (2018)に基づき、大学生を参加者として、黄色と緑色のカラーフィルタの効果を検討した。また、読字能力の高低によって、大細胞系視知覚を改善すると仮定されるフィルタ効果が異なるかを検討した。視覚ストレス仮説が正しいのであれば、読みテストが低得点であるほど、テキスト情報の理解におけるカラーフィルタの促進効果が大きいと予測した。 第二の目的として、文に下線を引くことで意味理解がさらに促進されるか、カラーフィルタと相乗効果が見られるかを検討した。そのため、統制文、名詞強調文、文字強調文、主語述語強調文の4タイプの文を用いて検討した。 実験の結果、緑フィルタ条件において低読字群よりも高読字群の文章理解得点が有意に高かったが、統制条件、黄フィルタ条件では群間の差は有意でなかった。この結果は、文を理解する際に緑フィルタを使うことが抑制の効果を持っていることを示している。本実験の結果は、視覚ストレス仮説と矛盾する結果である。この結果は、カラーフィルタがテキストを読み取る行動を抑制することを示したDenton & Meindl (2016)と一致する。したがって、本研究の結果は、カラーフィルタが読解力に影響を与えないこと、もしくは負の効果を与える可能性があることを示唆している。 最後に、文における下線の効果について、統制文よりも主語述語強調文で文理解が優れること、名詞強調文よりも文字強調文・主語述語強調文で文理解が優れることが認められた。これらの結果は、主語・述語など文全体の意味を強調すると文の理解が促進されるが、名詞などの部分情報を強調すると文全体の意味理解が抑制されることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
テキスト情報の理解におけるカラーフィルタの効果に関する実験を行い、関連の文献展望及び論文執筆を行ってきた。現在は、カラーフィルタ効果の影響がフォントなどテキスト情報特性によるものなのかを検討するための実験データを収集し、分析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
テキスト情報の特性を変数としたカラーフィルタ効果の検討についての実験データ解析を進めることで、考察を深め、国内外学会発表、論文投稿を行う予定である。
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Causes of Carryover |
国内外の学会がオンライン又はハイブリッド開催になったこと等が主な要因である。今後は対面開催が多くなる可能性があるため、旅費の発生が予想される。また、感染症の状況によって人件費・謝礼の支出が予想される。
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Research Products
(1 results)