2022 Fiscal Year Research-status Report
発達障害のある児童を含むインクルーシブな小学校国語科授業の教材開発
Project/Area Number |
21K02562
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
原田 大介 関西学院大学, 教育学部, 教授 (20584692)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 国語科教育 / インクルーシブ教育 / 教材開発 / 発達障害 / 授業研究 / カリキュラム開発 / 初等教育 / 教科書研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、通常の学級に在籍する発達障害のある児童を含むすべての児童に必要なことばの育ちや学びのあり方を検証し、インクルーシブ教育の実現を見通した国語科授業の理論と実践の構築に向けて、新たな小学校国語科の教材を開発することにある。 2022年度では、2011年から2020年までの10年に刊行された国語科インクルーシブ教育に関する先行研究を整理・検討した。分析の観点として、次の3点を採用した。(1)日本授業UD学会に所属する実践者や研究者が提唱する理論や実践の研究や、そこから派生した研究。(2)インクルーシブ授業研究会に所属する実践者や研究者が提唱する理論や実践の研究や、そこから派生した研究。(3)(1)や(2)以外に、学習者の社会的困難や多様性をめぐる教育の実践や理論について、実践者や研究者が個別に展開する研究。 研究の結果、学習者の多様性に焦点を当てた研究は、その分野に関心のある実践者や研究者に限られているために、質的・量的に偏りがあることがわかった。また、研究で取り上げられた学習者の社会的困難においても限定的であり、多様性を包摂する学習者研究や実践研究を充実させる必要があることが明らかとなった。国語の「授業UD」では、教育的な配慮を要する学習者を学びに「包摂」することのみがめざされる傾向にあり、マジョリティ(多数派)の側にいる学習者を学びに「再包摂」するための視座や見通しが弱いことがわかった。このことから、既存の国語科の枠組みの中で学習者の「包摂」をめざすだけではなく、国語科カリキュラム自体を問いなおす研究が必要であることも明らかとなった。 インクルーシブ教育の実現を見通した国語科授業の理論と実践の構築をめざす上で、教材の開発だけでなく、国語科カリキュラム(目標、内容、方法、評価等)をインクルージョンの観点から再構築する必要性があることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度の目的は、2011年から2020年までの10年に刊行された国語科インクルーシブ教育に関する先行研究を整理・検討することにあった。基礎研究に位置づく年度として、計画通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、障害を描いた国語の教科書教材の実態調査研究と、「読むこと」をめぐる学力論の研究の必要性があげられる。 インクルーシブな教材開発の方向性としては、1,既存の小学校国語の教科書教材のみを用いた授業展開をインクルーシブ化することをめざす教材開発、2,既存の小学校国語の教科書教材の「副教材」の位置づけをめざす教材開発、3,小学校国語科授業の「主教材」の位置づけをめざす教材開発、の3点が考えられる。3点のいずれの場合においても、児童が障害を描いた教材を読む際に必要な学力の育成を見据えた教材開発が求められる。 このことから、障害を描いた国語の教科書教材の実態調査を進めなければならない。また、障害を描いた国語の教科書教材を読むために必要な学力について、「読むこと」をめぐる学力論の先行研究も踏まえた上で検証することが必要である。
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Research Products
(2 results)