2022 Fiscal Year Research-status Report
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21K02580
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Research Institution | Naruto University of Education |
Principal Investigator |
幾田 伸司 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (00320010)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 国語教科書 / 説明的文章 / 教材史 / 中学校 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、戦後期の中学校説明的文章教材の採録史を総括的に記述し、学習者に提示された教育内容の変容を明らかにすることを目的としている。基礎資料として、教材採録状況、扱われている題材・内容等の情報を合わせた説明的文章教材データベースの整備を行っている。 本年度は、昨年度に引き続き、教科書研究センター附属図書館での教材本文の収集とデータベースの整備を進めた。また、作成したデータベースに基づいて、昭和62年度から令和3年度の期間に刊行された教科書での教材採録状況の全体像について検討を行った。 この期間の刊行教科書は44種で、採録された説明的文章は筆者数291人、教材数348編、延採録数は593回であった。延採録数が5回以上の筆者は18人いるが、桑原茂夫「ちょっと立ち止まって」、河合雅雄「若者が文化を創造する」、呉人恵「『ありがとう』と言わない重さ」、富山和子「暴れ川を治める」、龍村仁「ガイアの知性」、早川文代「食感のオノマトペ」、安田喜憲「モアイは語る」など、長く採録された教材の筆者の採録数が多くなっている。森本哲郎、池上嘉彦、伊藤和明は平成9年度あたりまでの前半期に多く採られ、平成24年度以降では池上彰、池内了、高槻成紀に複数の採録が見られるようになる。また、鷲田清一、野矢茂樹、内田樹等、高校教材に多く採録される哲学者の文章も近年には見られ、平成前半期に多かった森本哲郎や鶴見俊輔などと交替している。題材面で最も多かったのは「動物」で、次いで「言語」について論じる文章であった。「環境」は平成になって増えたトピックで、「動物」と重ねて生態系の破壊について論じる教材も増えている。動物園、図書館、遊園地などの大衆文化財を題材とする教材が増えたことも、平成後期以降の特徴である。、 これらの検討結果については論考として公表するとともに、作成したデータベースの一部を公開する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は説明的文章教材データベースを作成し、データベースに基づく教材採録状況の集計・分析を行った。データベース作成は、全教科書の調査を終え、教材名、筆者、教科書収載状況、採録教科書、題材を一覧化した目録を作成した。作成したデータベースに基づいて昭和62年度から令和3年度までの平成期に刊行された教科書に採録された教材の特徴について検討を行った。次年度は平成期の教材採録状況についての調査結果を公刊するとともに、昭和期に対する検討を行い、採録状況の全体像について研究発表等を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、説明的文章教材データベースの整備を終え、教材、筆者、題材・内容の時期ごとの特徴を検討している。今後、題材・内容等に関わる社会的背景とあわせて採録の要因について考察するとともに、採録期間が長い教材の文言や指導事項の異同を検討し、教材内容が書き換えられる背景を明らかにする。
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Causes of Carryover |
コロナ禍による行動自粛によって2021年度に予定していた教材調査を見合わせたため、当該年度の旅費予定額を執行できなかった。2022年度は当初予定通り2回の調査を行ったが、2021年度に行う予定だった調査を実施できなかったために、未執行額が生じている。また、年度末に教材調査を行ったため、資料整理のために準備していた資料整備のためのの人件費も未執行である。今年度は、収集した資料の整理と、未実施の調査を回数を増やして行う予定にしている。
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