2022 Fiscal Year Research-status Report
マルチメディアとALによる数学の深い学びへの誘いとその効果の検証
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21K02765
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Research Institution | Kurume National College of Technology |
Principal Investigator |
酒井 道宏 久留米工業高等専門学校, 一般科目(理科系), 教授 (90353276)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 利史 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (60396851)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | STEAM教育 / 結び目理論 / L-S理論 / 位相的データ解析 / グラフ理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
学科横断科目「リベラルアーツ特論」受講生に対し、STEAM教育における工学(E)と数学(M)の関連性に着目した学習活動を実践し、自ら課題を見つける力、物事を様々な面から捉え解決する力、新しい価値を創造する力の修得を目指す。工学分野と親和性の高いトポロジー分野で、L-S理論、結び目理論、位相的データ解析などを学習テーマに選定し、学習ピラミッドに沿った段階的な理解の深化を促した。前期は、マルチメディア教材を用いた学習及び興味を持ったテーマの発表を行った。後期は、テーマ毎にグループを作って協同学習を行い、教員の指導の下で主体的・能動的な学習を行った。また、2022年度はトポロジーに関連し、工学分野と親和性の高いグラフ理論について、専門家である本校の中村准教授と連携して協同学習グループを作った。結び目理論及びグラフ理論について第28回高専シンポジウムで受講生が成果発表を行い、視聴者から高い評価を得た。 【L-S理論】マルチメディア教材を活用した学習で、可縮の概念や長方形から浮き輪、及び長方形からクラインの壷への連続的変形の視覚的な理解の定着に成功した。 【結び目理論】鎖状錯体と呼ばれる配位化合物について,人工的に編組し作成された材料に対するゲーリッツ不変量を用いて解析し,数学的な分類に成功した。 【位相的データ解析】マルチメディア教材を活用した学習で、位相的データ解析の概念と計算方法の習得を促した。さらに、手法の1つであるパーシステントホモロジーの理解に必要なホモロジー群に関する講義を行い、数学的な理解を促した。 【グラフ理論】(1)あるモノクロ画像を元にノイズを付加した画像を複数用意して画像を復元することを考え、復元した画像の精度と使用した画像の枚数との関係について検証を行った。(2)街封鎖のような外乱を考慮した最短経路をシミュレーションする方法を提案し、ダイクストラ法との比較を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
L-S理論では、マルチメディア教材を活用することで効率的・視覚的に理解を促すことに成功したが、グループ分けの際に希望者が少なかったこともあり、浮き輪のL-Sカテゴリ数の計算には至らなかった。 結び目理論では、機械分野及び材料分野を専門的に扱う学科の学生らでグループを作り、協同学習を通してゲーリッツ不変量の計算による配位化合物の研究をテーマに選定し、第28回高専シンポジウムで成果発表を行った。位相的データ解析では、マルチメディア教材を活用することで効率的・視覚的に理解を促すことに成功した。さらに、ホモロジー群に関する講義で数学的な理解を促したが、プログラミングに強い受講生が少なかったこともあり、グループ学習には至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度に引き続き、前期にマルチメディア教材を作成・活用することによって効率的・視覚的な理解を促進し、Teamsによる授業の録画データを活用することによって予習・復習などの学習効果を高める環境を整備する。また、位相的データ解析やL-S理論の学習の進捗は、学生のプログラミングスキルに依存するという課題があるため、本校に専門家が所属し、かつ高いプログラミングスキルを必要としないグラフ理論をテーマに追加して選択肢を増やす。後期はテーマ毎にグループを作って協同学習を行い、教員による指導の下で主体的・能動的な学習を行う。さらに、そこで得られた学習成果について、シンポジウムなどでの発表に導く。 L-S理論では、授業内容を増やして興味や関心の喚起に努めるとともに、前期の段階で演習課題を与えて理解の定着を図るなどの工夫をする。理解の定着を確認した後に、長方形から浮き輪への連続関数の中でその像が可縮となるものを作成し、浮き輪やクラインの壺のL-Sカテゴリ数の計算に取り組む。 結び目理論では、2021年度にタンパク質の性質、2022年度に配位化合物の性質を解明できたため、研究対象を生物分野に拡大する。 位相的データ解析では、前期にホモロジー群の直接的な計算方法を授業で扱い、演習課題を与えてホモロジー群の理解と計算力の習得を図る。次に、ホモロジーの計算による炭素の同素体の解析を行い、HomCloudによる解析結果と比較する。さらに、カーボンナノチューブ等の分子構造のデータ解析に挑戦する。 グラフ理論では、前期にマルチメディア教材を活用して、一筆書きやオイラーグラフ、ハミルトングラフなどについて効率的・視覚的な理解を促す。後期は、生物・化学分野の学生を中心にグループを作り、化学物質(分子)をグラフで表すことによって、分子の(構造)異性体の違いや数について数学的な表現を与えることに挑戦する。
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Causes of Carryover |
旅費については、シンガポールで開催予定だった国際工学教育シンポジウムのISATE2022がコロナ禍の影響のためオンライン開催となったことによるものである。2023年度は、ギリシャで開催されるSTEAM教育の国際シンポジウム(7th Annual International Symposium on the Future of STEAM)などで使用する予定であり、現在、化学×数学をテーマにしたSTEAM教育のアブストラクトを作成中である。
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Research Products
(7 results)