2021 Fiscal Year Research-status Report
複素射影空間上の巡回被覆の因子類群の研究とその応用
Project/Area Number |
21K03182
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
白根 竹人 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 講師 (70615161)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 巡回被覆 / 因子類群 / ザリスキ対 / 平面曲線の埋込位相 / 分解グラフ / ベクトル束 |
Outline of Annual Research Achievements |
巡回被覆の最も単純な場合である2次被覆においても,因子類群と分岐因子の関係に関する先行研究は限られている.そのため,2021年度は,複素射影空間上の2次被覆の因子類群とその応用について研究を行った. 2次被覆の因子類群の応用を行うために,分岐因子の情報に関係する因子類群の生成系を取れるか研究を行った.これまでの研究より,射影空間上の非特異因子が2次被覆の引戻しにより分解するための必要十分条件はその定義方程式が特定の条件を満たすことであると分かっていた.そこで,定義方程式がその条件を満たす因子を「単純準分解因子」と名付け,単純準分解因子の引戻しの既約成分で生成される因子類群の部分群を調べた.2次被覆上の既約因子とその局所方程式の関係を整理することで,2次被覆の因子類群は単純準分解因子の引戻しの既約成分で生成されることが分かり,2次被覆の因子類群と分岐因子の関係の一端を解明できた.この成果はプレプリント Divisor class groups of double covers over projective spaces, arXiv2105:11797 にまとめ,論文誌に投稿した. 射影直線上の2次被覆である超楕円曲線の因子を表現する方法としてMumford表現が知られている.研究を効率的に進めるため,Mumford表現のアイデアを基に,一般次元における2次被覆の因子の表現方法について,専門家と情報交換を行いながら研究を行っている.この研究により因子の計算が簡略化できることが期待される. また,研究協力者と分解グラフの新たな応用について共同研究を開始した.この共同研究では分解グラフを改良するアイデアが得られた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2次被覆の因子類群と分岐因子の関係について,期待していた成果を得られた.一方,因子類群の元を因子的層に対応させた当初の計画における計算方法には,積をとる元が増えると多くの開集合による開被覆を考える必要があり,計算が複雑になる.また,因子類群の生成系はどの程度簡略化できるかという問題もあり,具体的に計算を進めるための障害となっている.また,参加を予定していた研究集会には中止になったものもあり,研究発表や情報収集は思うように進んでいない.しかしながら,研究協力者との情報交換と共同研究により,研究を進展させる体制を整えることができ,研究進度の遅れは小さいと言える.
|
Strategy for Future Research Activity |
超楕円曲線における因子のMumford表現のアイデアを基に,一般次元における2次被覆の因子の表現方法を定式化し,因子類群上の計算を簡略化する.この簡略化により学生との共同研究を開始し,具体例を計算することで研究を推進する.また,定式化した表現方法とベクトル束の関係を明らかにすることで,ベクトル束への応用も進める. さらに,研究協力者との共同研究における分解グラフの改良のアイデアを定式化し,平面曲線の埋込位相の研究も進める.
|
Causes of Carryover |
年度末に出張を予定していたが,コロナウィルスの感染拡大により中止となったため,次年度使用額が生じた.予定していた研究打ち合わせを次年度に行う計画であり,次年度使用額はその出張費用に充てる.
|