2023 Fiscal Year Research-status Report
複素射影空間上の巡回被覆の因子類群の研究とその応用
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21K03182
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
白根 竹人 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 准教授 (70615161)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 分解型不変量 / グラフ多様体 / 平面曲線の埋込位相 / ザリスキ対 / ベクトル束 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は,引き続き(1)分解型不変量の一般化,(2)ザリスキ対の構成,(3)2次被覆上の因子的層の押し出しによるベクトル束の構成の研究を行った. (1)平面曲線の境界多様体をグラフ多様体と対応させ,管状近傍における埋込位相をplumbing graphにより表現できる.そこから,射影平面上のガロア被覆をとったとき,平面曲線の引戻しの境界多様体の位相を,modified plumbing graphを用いて,新たな組合せ的量を定義した.本年度は,ある仮定を満たす同相写像のもとでは,この組合わせ的量は不変であることを示した.また,この仮定を満たさない同相写像に対する不変性の証明に取り組んでいる. (2)坂内真三氏,徳永浩雄氏とその学生らとPonceletの閉形定理を応用してザリスキ対を構成し,論文を投稿中である.このザリスキ対は,2つの2次曲線とそれらの双接線2本と閉形定理による2n角形から成る平面曲線で構成されている.その特徴は,2n角形のnを自由に選べ,非特異有理曲線によるザリスキ対の無限族を与えることである.また,坂内真三氏と徳永浩雄氏と共に,ザリスキ対の退化に関する現象と分解型不変量についてまとめた論文を執筆し,学術雑誌に投稿した. (3)2次被覆の因子類群の生成元に関する主張の証明にギャップがあり,方針を変更する必要が出てきた.一方で,三井健太郎氏との共同研究により,2次被覆上の因子的層の押し出しで得られる階数2反射的層のチャーン類を計算する手法を確立した.階数2反射的層がベクトル束となるためには3次以上のチャーン類が消える必要があるので,分裂しないベクトル束の候補の構成につながることが期待できる. また,東京都立大学,東京電機大学,徳島大学,日本文理大学,宇部工業高等専門学校,大阪大学にて研究集会を主催し,情報収集や研究交流を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
分解型不変量の一般化においては当初の想定以上に実3次元多様体の情報や精密な解析が必要であることが判明し,予定より時間がかかっている.一方で,情報収集や解析は進んでおり,一般化が完成することが期待できる. ザリスキ対の構成については,2本の論文を執筆し,順調に進展していると言える.また,新たな観点からザリスキ対の候補が得られており,今後も進展していくことが期待できる. 2次被覆の因子類群の生成元については方針転換が必要となっており,遅れが生じている.一方で,2次被覆上の因子的層の押し出しの研究についてはチャーン類の計算法を確立でき,進展していると言える. また,計6回の研究集会を開催した.特に,前進の研究集会から引き継ぎ,代数幾何や位相幾何など複数の分野の交流を目的とした「Algebraic Geometry, Topology, Combinatorics and Related Topics」を開催し,情報収集や研究交流の幅を広げることができた.このように予定より遅れている面もあるが,進展している面もあるため進捗状況は「やや遅れている」と言える.
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Strategy for Future Research Activity |
分解型不変量の一般化の方針としては、(ア)境界多様体の既約性を示し実3次元既約多様体の基本群による分類を用いる、もしくは(イ)非特異部分と特異点の近傍上のグラフ多様体に分割して同相写像を貼り合わせる、という二つの方針を考えている.(ア)の方針は場合分けが複雑になりそうなので,現在は(イ)の方針を考えている.必要であれば,位相幾何学の専門家と議論を行い,証明を試みる.また,以前より考えていたアイデアであるブレイドモノドロミーとの関係を調べる. 共同研究者の坂内真三氏と徳永浩雄氏と協力し,引き続きザリスキ対の構成を行う.特に,分解型不変量の一般化を完成させ,従来の分解型不変量では区別できないザリスキ対を構成する.方針としては,射影平面をブローアップした曲面での議論が有効になることが期待できるため,そういった曲面での構成法の確立を目指す.また,昨年度執筆した論文のアイデアを結節的拡張し,結節的平面曲線の不分岐2次被覆と位数2の直線束との対応を記述することで,新たなザリスキ対の構成を目指す. 2次被覆を用いたベクトル束の研究においては,三井健太郎氏と協力し,押し出しによる階数2反射的層のチャーン類をコンピューターを利用できるように計算法を定式化することを目指す.そして,様々な場合に対してチャーン類を計算することで,反射的層がベクトル束となる条件や分裂しない条件などを模索する.因子類群の生成元については,超楕円曲線束の理論などを応用できるように,情報収集を行いながら進めていく.
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Causes of Carryover |
研究集会に招待した研究者が別経費により参加されたこと,また研究発表の際に旅費の補助が得られたこと等により次年度使用額が生じた.位相幾何学などに関する深い知識が必要になる可能性もあるため,情報収集のための出張や招聘に使用する計画である.
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Research Products
(4 results)