2023 Fiscal Year Research-status Report
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21K03279
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
石田 敦英 東京理科大学, 教養教育研究院葛飾キャンパス教養部, 准教授 (30706817)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 時間依存調和振動子 / リパルシヴ / 波動作用素 / 逆二乗ポテンシャル / 逆散乱問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
・劣2次の斥力項を持つシュレディンガー作用素(リパルシヴハミルトニアン)に相互作用を表すポテンシャル関数を加えた量子力学系において、ポテンシャル関数の空間遠方の減衰の指数がある閾値以下である場合に波動作用素が存在しないことを証明することで、短距離型と長距離型というポテンシャル関数のクラスの境界を解明した論文が国際誌にて出版された。これは愛媛大学理工学研究科の川本昌紀氏との共同研究によるものである。 ・通常の調和振動子では粒子は束縛状態のみであり、空間遠方に散乱することはない。ところが、ばね定数が時間に依存した場合、特に時間に関して-2乗で減衰する場合には散乱状態が形成されることが知られている。空間次元を3以上として、この時間依存の調和振動子に逆2乗ベキの強い特異性をもつポテンシャルを加えた量子力学モデルにおいて、波動作用素の漸近的完全性を証明することができた。証明において鍵となるのは、時間依存の慣性系へのユニタリー変換を導入することで時間に独立な量子力学系の解析に帰着させる点である。さらにこの手法を応用することでストリッカーツ評価とそれを用いた非線形偏微分方程式の初期値問題の可解性も証明した。これらも愛媛大学理工学研究科の川本昌紀氏との共同研究によるものである。現在プレプリントサーバarXivに公開、国際誌にて査読中である。 ・上述の時間依存の調和振動子に短距離型のポテンシャル関数を加えた量子力学系において、散乱後の状態から、そのポテンシャル関数の一意性を導く逆散乱問題を解決できた。1995年に開発されたエンス・ベーダーの方法を応用したもので、波動作用素を用いて定義される散乱作用素の高速極限を解析することで一意性が導かれる。こちらもarXivに公開済み、国際誌にて査読中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
劣2次の斥力項を持つシュレディンガー作用素の波動作用素の非存在の論文が出版されたことに加えて、時間依存調和振動子の量子力学モデルの研究が順調に進展している。よっておおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2次の斥力項を持つシュレディンガー作用素に特異性を含んだ短距離型相互作用ポテンシャルを加えた場合の逆散乱問題は2014年に研究代表者によって証明されている。この特異性の部分はq乗可積分であり、空間次元nが4以下の場合はq>2、5以上の場合はq>n/2を仮定していた。このqの条件を緩めてより強い特異性を許容する研究を推進していく。目標は空間次元nが3以下の場合はq=2、4の場合はq>2、5以上の場合はq=n/2である。これは通常のシュレディンガー作用素の場合にポテンシャル関数に許容される指数条件である。2次の斥力項を持つシュレディンガー作用素の場合も同じ指数条件が適用されることを証明したい。
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Causes of Carryover |
他機関から積極的な旅費の援助を頂き次年度への繰越が生じることとなった。次年度は長期海外滞在を予定しており、滞在先での概ねの消化を見込んでいる。
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