2021 Fiscal Year Research-status Report
複雑ネットワークにおける隣接行列の縮約的表現法の開発とその応用
Project/Area Number |
21K03387
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
守田 智 静岡大学, 工学部, 教授 (20296750)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡部 拓也 静岡大学, 工学部, 准教授 (10324336)
伊東 啓 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (80780692)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 複雑ネットワーク / 感染症モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
複雑なシステムをネットワーク構造に注目して解析していくネットワーク科学の手法は,幅広い学術領域で用いられている.従来のネットワークモデルの多くは,単純グラフを扱うことが多く,リンクの重みは考えない.つまり,重みが小さいとみなされるようなリンクは無視されスパースなネットワークとして解析されている.しかし,たとえば社会ネットワークを考えてもわかるように関係性が薄いからと言って無視してしまっては重要な知見を見逃してしまう可能性がある.しかしスパースでないネットワークを解析する際,ネットワーク科学で用いられている手法の計算時間が現実的ではなくなるという問題がある.本研究の究極的な目的は,巨大なネットワークを理論物理学的な手法で粗視化し縮約されたネットワークを構築することである.またネットワークに対する理論的な命題は,システムサイズの無限大の極限を想定している場合が多いが,有限なシステムをどれくらい明確にとらえているかという問題にも取り組む. 初年度はネットワーク上の感染症モデルを対象にネットワークの粗視化の問題を扱った.ここで着目したのはタイプ別再生産数という疫学モデル上の概念である.これは,ネットワークのノードをタイプに分け,そのタイプ内での感染過程に着目するものであり,感染予防対策をどのタイプの人に集中するかを決めるために使われる実用性を持つ指標である.タイプ別にわけてネットワークを扱う有効性を調べ,その結果を1報の原著論文として公表した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まずは,感染症モデルに関しての研究成果を1本目の論文として単著で Physica A, 587, 126514 (2022)に掲載することができた.さらに1本目の内容を発展させ,従来の感染症モデルのネットワーク理論を大きく進展させるような研究成果を別の論文として投稿中であり,査読をへて改訂しているところである.さらには研究分担者らと執筆した性的関係の社会ネットワーク分析の論文も投稿中である.共同研究者とのミーティングや学会発表などの出張が新型コロナの影響でできなかったことと上記の論文の掲載が年度中に間に合わなかったため,研究予算の一部を繰り越すことになったが,研究自体は実質的には問題なく進展しているといえる. 本研究の内容も含んだネットワーク科学のテキストを出版予定であるが,そちらの方はあまり進んでいないことを出版社と関係者の方々にこの場を借りてお詫びしたい.
|
Strategy for Future Research Activity |
この研究報告を書いているときに気づいたのは,この研究課題が初期に考えていた以上にすばらしい計画であったということだ.現在,改訂中の論文を早期に仕上げ,次の段階へ進みたい.具体的には, (1)ネットワーク上の感染症モデルにおいてタイプ別再生産数についての理論を確立すること. (2)社会ネットワークの実データに関して上記の理論を展開していくこと. (3)感染症以外の伝播現象やゲーム的な状況についてネットワーク粗視化の効果を調べること, であり,これらの研究を速やかにおこなっていきたい.
|
Causes of Carryover |
発表学会をおこなった春季の学会がオンライン開催となったため旅費の支出が抑えられたためである.この分は今年度の学会発表の旅費として使う予定である.
|
Research Products
(7 results)