2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K03554
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
大木 洋 奈良女子大学, 自然科学系, 助教 (50596939)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 素粒子論 / 場の量子論 / CP対称性 / 宇宙論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の宇宙の起源解明に関して、自然界の基本的対称性の一つであるCP対称性とその破れは現在の宇宙における物質反物質非対称性を生じさせるための必要条件であるSakharovの3条件の一つとして知られており、自然界におけるCP非保存の起源の解明は素粒子論や宇宙論において極めて重要である。近年、CP対称性と整合しないような特殊な型の離散内部対称性が存在している模型においてはCP変換が粒子反粒子間の変換とは異なるためCP対称性の破れが生じるという可能性が指摘されていた。このような変換は通常のCP変換と区別してCP-like変換といわれており、このような模型の構造について詳細に調べた結果、離散対称性の破れによってCP-likeがCPに回復する可能性があること、CPが定義出来るような現実的な模型においてもCP-like対称性が存在する可能性があることが分かってきた。またこのようなCP-like対称性を一般の内部対称性を持つ理論に拡張することで、素粒子標準模型を超えた新物理模型として、従来考えられていなかった新しい対称性に基づいた理論が存在している可能性がある。本研究成果は物理学会等で発表しており、現在学術論文を準備している段階である。また、このCP-like離散対称性を含めた理論の古典解の構造や量子効果等を考察することで場の量子論に関する新たな知見が得られる可能性があり、そのような理論におけるCP-like対称性の自発的破れと真空構造の関係について研究を進展させる必要がある。またCP対称性の破れに関連した非摂動ダイナミクスを含めた計算を行うことで、物質反物質非対称性の起源等の素粒子現象論や宇宙論に関する応用についても研究する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度研究実績の概要の通り、本研究の課題の一つである宇宙進化における大きな謎である物質反物質非対称性と密接に関連するCP対称性とその破れに関する研究を行い、従来考えられていないような新しい対称性に基づく場の理論を構成出来る可能性があることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度研究実績の概要の通り、拡張されたCP変換(CP-like)対称性に基づいた宇宙における新たな進化のシナリオの可能性と素粒子標準模型を超えた新しい物理模型への応用を考える。また昨年度から進めている格子シミュレーションにおけるテンソルネットワークを用いた相転移現象の物理に関する研究も並行して進めている。具体的にはテンソルネットワーク繰り込み法を用いた低次元場の量子論におけるトンネル効果が存在する模型における真空の崩壊率の計算を行う。またデータ管理用のディスクの購入などを検討し、効率的に計算を進める予定である。
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Causes of Carryover |
海外出張や国内研究会への参加がオンラインになったことなどにより、旅費、滞在費などが少なくなったことにより、来年度以降に使用する予定である。
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