2021 Fiscal Year Research-status Report
Evolution of early-Earth atmophere with reduced chemical compositions
Project/Area Number |
21K03638
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
倉本 圭 北海道大学, 理学研究院, 教授 (50311519)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 原始大気 / 流体力学的散逸 / 原始海洋 / 光化学 / マグマオーシャン / アンモニア |
Outline of Annual Research Achievements |
[揮発性物質の原始大気・惑星内部分配モデルの構築]マグマオーシャン、金属鉄、富水素原始大気間の水素、炭素等の揮発性元素の分配を、原始惑星の集積成長過程と同時に解く数値シミュレーションコードの開発を進めた。近年の地震学的探査によって理解が急速に進展している火星内部の揮発性物質量と対比できるアウトプットを得つつある。 [多成分大気散逸モデルの拡張]新たにH2Oとその光化学生成物を放射冷却材として加えた流体力学的散逸モデルを構築した。モデル計算の結果、放射活性の高いH2Oならびにその光分解生成物にも、その放射冷却効果によって原始大気からの水素流出を大幅に抑制する働きがあることが明らかになってきた。これは還元的原始大気が、惑星集積期を含め数億年の時間スケールで持続しうることを示す。 [原始大気海洋系の化学進化モデルの構築]光化学過程と水溶液反応に駆動される、原始大気-原始海洋の結合進化モデルのひな型を構築した。富水素大気から出発した場合、非水溶性の高分子炭化水素が大量に生じ、原始海洋表層に油質層を形成する可能性が明らかになってきた。また、NH3の貯蔵庫としての海洋の役割について理論的に解析を進めた。炭酸塩との化学平衡状態にある海洋を想定すると、NH4+を含む溶存NH3量は気相中のNH3量を大幅に上回りうることが分かった。これは原始地球表層でアミノ酸の無生物学的な合成が可能とされる大気NH3分圧レベルが、従来の大気光化学モデルからの推定よりも大幅に伸びる可能性を示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
原始大気と金属相を含むマグマオーシャンの化学的相互作用を組み込んだ惑星集積・分化モデルの構築が進み、原始惑星の生き残りとされる火星の内部揮発性物質量の観測的制約と対比しうる計算結果の出力に成功しつつある。 これまで成功していたH3+、CH4、COとその光化学反応生成物を主たる放射冷却源とする大気散逸モデルをH2Oを含む系に拡張することができ、水素流出とそれに伴う揮発性物質分別をより現実的に取り扱うことができるようになった。 原始大気海洋系の化学進化の素過程について物性・反応論・化学平衡パラメータの収集とモデル化が進展し、原始地球上での化学進化に新たな理解を得つつある。
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Strategy for Future Research Activity |
それぞれのモデリングから得た知見を相互にフィードバックさせ、モデルをアップデートする。特に、これまでの個々のモデリングにおいて難度が高く、系の振る舞いに重要な影響を持つにもかかわらず信頼性を欠いてきたモデル要素をきちんと定式化し実装することを目指す。観測的制約ならびに大気進化の素過程の理論解析と、それらを結合した大気進化モデルのシミュレーション結果に基づき、還元大気の形成から出発する初期地球表層進化シナリオを追求する。
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Research Products
(6 results)